阪神・藤浪、驚異150キロフォーク 最速161キロで誠也&松山連続K斬り
「阪神2-0広島」(21日、甲子園球場)
1球ごとにスタンドが沸いた。スコアボードの球速表示に感嘆の声が響く。マウンドの阪神・藤浪は八回、真っ向勝負で鈴木誠、松山を連続三振に斬った。勝敗をも超越した13球の熱投ショー。これで登板8試合連続無失点。この間、被安打はわずか1本と抜群の安定感が光る。
「青柳さんも好投していましたし、何としても勝ちを消さないように投げました」
復帰即2ランを放ったマルテ、55日ぶりの勝利がかかった青柳。リリーフはチームの思いを背負ってマウンドに立つ。「こんなに緊張するとは…」と漏らした9月29日・中日戦の初ホールドから3週間。日増しに高まる期待、信頼を一身に、広島打線に相対した。
リードは2点。まず驚かせたのは先頭・田中との対戦だった。2球で追い込むと3球目、低めにフォークを投げた。見送られた1球は「150キロ」を計測。続く4球目、今度は161キロの直球に歓声が起こる。それでも5球目、しぶとく中前に抜かれた。犠打を挟んで1死二塁、得点圏に走者を背負う。
続く打者は鈴木誠。8打数3安打、1本塁打、3四球と分の悪い同級生にはカットボールで意表を突いた。4球続けて見逃し三振に斬ると、一転して松山にはオール直球勝負。159キロ、160キロで追い込み、158キロで連続三振に抑える。“緩急”で圧倒した。
「何があっても、自分のことを信じてみようって。今年はブレないって決めたんです」
今春のキャンプだ。ソフトバンクの元エース・斉藤和巳氏が宜野座を訪れた。テレビ収録の仕事だったが、終えても帰ろうとしない。藤浪の練習終わりまで待つと、惜しみない技術の助言を授けた。
その上で、聞いた一言が藤浪の胸に残る。「結局、最後は自分の人生。誰も助けてくれないぞ」。孤独なマウンドで躍動する背景に“自信”がある。
7ホールド目。いまや勝利の方程式に欠かせぬ存在となった。「先頭を出しましたが、その後しっかり抑えることができて良かった」。険しくても、遠回りでも、信じた道の先に成長があった。「ピッチャー・藤浪」のコールに球場が沸く。チームの思いを背負って、また次のマウンドに上がる。