【矢野虎逆襲への道1】2年連続12球団ワースト失策招いた一因 複数ポジション起用
矢野阪神2年目は、2位でシーズンを終えた。15年連続でリーグ優勝を逃し、指揮官が公言してきた日本一達成を逃した。2年連続優勝を果たした巨人との差はどこにあるのか。今季の問題点や課題を整理し、来季への希望も含め、3回にわたって連載で検証する。
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矢野監督が昨オフから公言し続けてきた言葉がある。「日本一になります」。「なりたい」ではなく、「なります」。言い切ることで、具体的なイメージを持たせようとした。
だが、守備の破綻が計算を狂わせた。矢野監督はこの日のオーナー報告でも、優勝を逃した原因に挙げた。
「エラー数が改善されてない。大きな全体の課題として残った」
昨季は102失策で、今季も85失策。失策数は2年連続12球団ワーストで、リーグ優勝した巨人の42失策とは2倍以上の差がある。
土の甲子園を本拠地とする阪神と、人工芝の東京ドームをホームとする巨人。単純比較はできないが、阪神は460失点でチーム防御率3・35。対して巨人は416失点で同3・33。失策が無駄な失点につながっていることは明らかだ。
昨季終了後から守備強化には取り組んでいる。昨秋、今春キャンプは連日の早出、居残り特守を実施。基本の確認など量も質も変わり、成果が出た選手もいる。大山は昨季の20失策から6失策。木浪も昨季の15失策から8失策と成長を見せた。
それでも全体の失策数が減っていない。今季を振り返ると、その一因として、複数のポジションを守っていることが浮かび上がる。
木浪は開幕から遊撃だけを守っていたが、自身の出場25試合目から二塁にも入るようになると、同32試合目で初失策を犯した。
大山も7月1日・中日戦でプロ初の中堅に入るなど、全5ポジションに就いている。
植田は7月11日・DeNA戦で本職ではない中堅で途中出場し、九回に同点の適時失策を犯した。マルテが10月23日・巨人戦で犯した4失策も、本職の三塁ではない一塁だった。
練習の量と質を改善しても、複数のポジションを守る場合には、相応の経験や練習が必要であることが明確となった。矢野監督は選手の可能性を広げる意図で、複数ポジションでの起用を続けてきた。来季も方針を貫くのか。一つの守備位置で軸を決め、サブを並行起用するのか。マネジメントにも注目だ。
どんな形であろうと、課題さえ克服できれば、日本一へのイメージはより具体的になる。