【阪神新人紹介】育成ドラフト1位・岩田将貴【2】
10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた9選手の連載をお届けする。最終回は育成ドラフト1位・岩田将貴(22)=九産大。プロへの扉を開くまでの道のりを振り返る。
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大学3年時にトミー・ジョン手術を受けた。左肘に入れた2度目のメス。リハビリが思うように進まず、母・京子さんと将貴は共に涙を流した。京子さんは苦しむ息子へ声をかけた。
「そんなにつらいんだったら、野球辞めてもいいよ」
2日間に及んだ家族会議。父・陽三さんは「お通夜みたいだった」と振り返る。兄、姉とも電話で意見交換。「どっちにするんだ?って。プロになりたいのか、社会人に行ってからプロを目指すのか」と陽三さんは聞いた。答えは一つだった。
「プロ野球選手になりたい」
幼少期から一度もぶれなかったプロ野球選手になるという夢。「目標だったし、治療費も出してもらってるし、そういう意味では結果で恩返ししないといけない」と将貴。「全面的にバックアップする」と家族は背中を押した。陽三さんは「ただし、リハビリとかは主治医の先生の話を聞いて、しっかりしないと許さない」と厳しい言葉も送った。
ひたむきに頑張る将貴の応援に、京子さんは全試合駆けつけた。「一番遠いのは(NOMOジャパンの時の)アメリカですね」と笑い、「鳴尾浜にも行けたら行きたい。2軍戦は福岡でもあるので、必ず行きたいと思います」と今後も追いかける。
現在はリハビリに根気強く励んだ成果もあり、リーグ戦で登板するまでに回復。将貴は「厳しく思ったことをズバッと言ってくれる人だった」と主治医の先生にも感謝した。
今ドラフトでチーム唯一の育成指名。両親は将貴の活躍を心から願う。「今までいっぱいけがをして、痛い思いをしてきた。もう痛い思いはしないように頑張ってほしい」と京子さん。陽三さんは「支配下を早く勝ち取ること。いつか日本一になってほしい」とチームの悲願も祈った。
「甲子園で成長した姿を見せてあげたい。そのためにも自分の課題をクリアして支配下にならないといけない」。家族、恩師、主治医…将貴は支えてくれた人の思いを背負い、プロで輝きを放つ。=終わり=
◆岩田 将貴(いわた・まさき)1998年6月16日生まれ、22歳。福岡市出身。178センチ、83キロ。左投げ左打ち。投手。兄の影響で小学1年からソフトボールを始める。ポジションは主に一塁。中学で福岡ボーイズに所属し、投手に転向する。中学3年でNOMOジャパンに選出。九産大九州高では1年夏からベンチ入り。2年春に甲子園出場を果たす。九産大では1年春からリーグ戦に登板。2年春に7勝を挙げMVPを獲得した。