能見「どこも痛くない。引退の選択なかった」阪神で花道、ポスト用意されたがオリへ
今年も多くのプロ野球選手たちがユニホームを脱いだ。移籍先など次の進路が決まった選手がいる一方で、未定の選手は例年以上に多い。まずはセ・リーグ編。かつて一時代を築いた虎戦士が思いを語った。
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今季限りで阪神を退団した能見篤史投手(41)は、兼任コーチとしてオリックスと来季契約を交わした。これまで虎一筋16年。長くエースとして歩んだ軌跡は、勝てなかった球団史と重なる。「かなわぬ夢になった」。入団初年度のリーグ優勝以降、幾度となくあと一歩が届かなかった。
11月10日の巨人戦。藤川の引退試合を眺めながら、自身の近未来を重ねていた。「俺は違う道を選んだわけやから。決断は人それぞれなんだと思う」。10月21日、球団から来季の構想外を伝えられた。引退後のポストと、花道も用意された打診。「実は…」と秘めていた思いを今明かす。
「来年くらいかなとは思っていた。それくらいの気持ちはあったけど、今年でというのはなかなか難しかった。なんせ、どこも痛くない。最初から引退の選択はなかったかな」
コロナさえ、あと一年契約があれば…。たら、ればが許されるなら来季、藤川のようなフィナーレだっただろう。ただ、16年を振り返れば「感謝しかない」と言う。25歳の時に自由獲得枠で入団。即戦力として期待されながら、4年目まで1、2軍を行き来した。球団は辛抱強く待った。
「後悔?そんなのありすぎるわ」。笑って振り返るが遠回りした分、後輩たちに伝えたい思いもある。「たくさん助言もいただいた。でも自分で気付いてトライして、得たものはなくならない」。08年だ。横手投げのジェフが1球、上から投げた姿にヒントを得た。発見と試行錯誤がエースの勲章だ。新天地に挑む21年。ユニホームを脱ぐのは、まだ早い。