小山正明氏 阪神、巨人には負けるな 対抗意識の源はドラフト制以前にあり
阪神は今季も悲願の優勝には手が届かなかった。チーム成績は2位ながら、巨人には8勝16敗と大きく負け越し、7・5ゲーム差の独走Vを許した。宿敵を上回るには、どこに課題があるのか。優勝へのカギは何か。監督経験者らレジェンドOBが分析する。第3回は小山正明氏の声。
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今の阪神選手たち、スタッフ、ファンの方々に、私の言葉がどれぐらい響くかは分からない。それでもあえて言わせてもらう。
巨人には負けるな。
もちろん巨人だけが敵ではない。それは今も昔も同じだが、昔の方が巨人への対抗意識が強かったのは間違いない。我々世代もそうだが、もう少し上の世代はさらに強かったように思う。
私が現役だったころ。巨人戦で先発する試合前、当時の藤村富美男監督に「きょうは行けるとこまで目いっぱい行きまっせ!」と意気込んだことがあった。すると監督から「何い!行けるところまでやなくて最後まで行け!」と完投指令を出された。また、試合中にピンチに陥ったときには先輩野手がマウンドまで来て「ここで打たれたら、どないなるか分かっとんやろなあ」と気合を注入されたこともある。それぐらい当時の選手、首脳陣は巨人戦で燃えていたわけで、その思いは我々OBの心にも脈々と受け継がれている。
当時はドラフト制度が導入される前で、新人獲得は自由競争。アマ球界の有力選手のほとんどが巨人に行くような時代だった。圧倒的な戦力を誇る宿敵を倒そうと、同じように歴史のある阪神や中日が必死になっていた。巨人への対抗意識の源はそのころにある。
ドラフト制度のある現代では、大きな戦力差もない。実際、今季の巨人に対して阪神の戦力が劣っていたとは思わない。それだけに8勝16敗と大きく負け越したことが歯がゆい。巨人が日本シリーズでソフトバンクに力負けしたことを考えても、昔のような圧倒的な戦力があるわけではない。戦い方次第で阪神が巨人を上回ることは難しくないはずだ。
最後に一つ。巨人が阪神戦(8月6日・甲子園)で野手を登板させたが「こんなことをする時代になったのか…」と何とも言えない気持ちになった。野手が1試合リリーフしたところで、投手陣の負担が軽減されるはずがない。原監督にそんなつもりはないのかもしれないが、なめられているような気がした。時代が変わったということなのかもしれないが、私には理解できない。もう一度言う。
巨人には負けるな-。