元阪神・横山雄哉氏 アカデミーコーチ就任「子供たちに『あきらめないこと』伝えたい」
タイガースアカデミーの新規生徒募集が2月10日から開始されることを受け、1月から同スクールでコーチを務めている元阪神の横山雄哉氏(26)がインタビューに応じた。昨季限りで現役を引退した、2014年度ドラフト1位左腕は現役時代の苦労や、新天地でのやりがいなどを語った。
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-アカデミーコーチになって今の心境は。
「まだまだわからないことだらけです。だけど、野球をやることには変わらないので、野球を通して子どもたちと触れ合って、野球の楽しさを教えていこうと思ってます」
-アカデミーコーチになることを決断した理由は。
「僕の中では家族が一番大切。いろいろ考えた上で自分のずっとやってきた野球を、阪神でやってきた中で仕事をありがたいことに頂けた。それを生かしていこうと思ってアカデミーコーチをやるって決めました」
-理想のコーチ像。
「僕は大した活躍もしてなくて、インパクトもないと思う。でも、色んな人と明るく接していけることが僕の売りというか性格だと思う。アカデミーコーチという立場になって、コーチ面をするのは嫌いで、子どもたちと『楽しく明るく元気よく』というのをテーマに。さらにもう1ランク上というか、アカデミーに新しい風を僕なりの色で表現していけたらなと思う」
-アカデミーコーチ就任について矢野監督から話はあったか。
「戦力外を受けてあいさつした時に、『野球だけが全てじゃないし、色んなステージで野球を生かして、学んだことが絶対にあると思うから、どんな道であれ野球を通して学んだことを生かして頑張ってくれ』と言われました」
-現役生活で一番思い出に残ること。
「思い出はやっぱり最初の登板(※1)です。それが僕の中で心に残ってます」
-初勝利よりも。
「初勝利(※2)もうれしいんですけど、ビジターだったんで。本拠地・甲子園で初登板であの大歓声は衝撃というか、ベンチ前のキャッチボールの時間とかも『やばいな』と思って。登板前とか自分が立ってることが不思議な感じでした」
-一方で苦しかったことは。
「やっぱりきつかったのはけがをしてる時。手術をして、育成になってしまったって時が…。背番号も変わってしまって、その時は悔しいというのがプロの中で一番強かったと思います」
-けがをした経験から子どもたちに伝えられることは。
「けがした時でも、前を向いて、地道にトレーニングできたことは自信になっている。そういう時に諦めないこととかは、子どもたちに伝えてあげられたらなと思います」
-11月の戦力外では「頭が真っ白に」と驚いた様子だった。そこから引退決断までの心境変化は。
「本当にスッキリした。最初は(現役を)やろうとは思ったんですけど、正直に言ったら限界も感じてました。その中で、モチベーションになったのは家族で、僕がしっかりしないといけないと思った。決断には時間がかかりましたけど、意外と切り替えられたって感じです」
-限界を感じた部分とは。
「正直、納得がいくボールを投げられたのは1年目だけ。言い方は悪いですけどファームだったら抑えられてしまった。1軍だったら通用しないっていうのは僕自身分かってたことなので。1軍で結果を出す人ってファームですごい成績を残しますし、バッターを圧倒する感じがある。僕にはそれがなくて、打ち損じ待ちという投球がずっと続いていたので、それがやっぱり厳しいのかなとは思いました」
-現役時代に影響を受けた人は。
「能見さんと岩貞さんと遥人かな」
-先輩2人とは一緒に自主トレしていた。
「能見さんはずっと尊敬してるって言ってますし。岩貞さんは兄貴のような存在。あの人を恨む人って誰もいないですし。人間性で僕は結構見ちゃうんですよ。そういった中で、行動とか練習に対する取り組みとかはすごい勉強しました」
-投手キャプテンになるのも納得か。
「その時はちゃかしたんですけど(笑)。でも、向いてると思います。誰からも信頼されてますし、岩貞さんがキャプテンはいいなと思います」
-高橋は年下だが。
「遥人はボールがすごくて、最初に衝撃を受けた。あとは、遥人もけがが多くて、僕のようにはなってほしくないなと」
-昔の自分に似ているところがある。
「かわいげがあって、真面目な後輩で、リハビリも一緒にやって相談も受けました。ずっと声をかけてて、引退した今でも『状態どうや?』とか連絡を取る。僕のように歩んでほしくないなと、真剣にそれは思うので、本当に頑張ってほしいって思いますね」
-野球人口が減っていることに関して思うことは。
「僕は田舎出身で、広い公園もあって、河川敷もあったりして、どこでも野球ができた。今って子どもたちが野球ができる場所がない。あとはゲームとか携帯とかの普及もあって、外で遊ぶことができなくなってきてるのかなと。そういう中でアカデミーとして、野球を楽しんでもらう、うまくなってもらう、そういうテーマでやってる」
-そういう意味でもタイガースアカデミーとしての活動が大事になってくる。
「タイガースアカデミーというのを知ってもらいたいです。体験会を増やしたりとか、小学校に訪問したりとか、そういう活動をやってるので、色んな方にアカデミーの存在を知ってもらいたい。コーチ1人1人が思ってることは一緒で、アカデミーは楽しい場所なので、ぜひ来て下さいというか、一緒にやりましょうと思ってます」
※1…2015年5月21日・巨人戦(甲子園)。先発し、7回1失点の好投も打線の援護に恵まれず勝ち星はつかず。
※2…2016年5月4日・中日戦(ナゴヤドーム)。先発し、7回無失点。
◆横山雄哉(よこやま・ゆうや) 1994年2月21日生まれ。山形県出身。山形県立山形中央高、新日鉄住金鹿島を経て、2014年度ドラフト1位で阪神に入団。1軍では9試合に登板し、3勝2敗、防御率4・67。昨オフに戦力外通告を受け、現役を引退。1月からタイガースアカデミーのコーチに就任した。