阪神投手陣は優勝できる陣容 佐藤義則氏の分析「藤浪は直球も変化球も十分な質」
16年ぶりのリーグ優勝を目指す阪神の、春季キャンプが終了した。優勝のカギは「やはり投手陣」とする本紙評論家・佐藤義則氏(66)が、キャンプ視察を通じて感じ取ったところを総括する。
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まず「おっ」と思わされたのが、矢野監督の表情だ。キャンプ最終盤を迎え、西勇、高橋という主力の離脱がありながらも、「今年はいいですよ」と力強い言葉を掛けてくれた。空元気ではない自信の表れと受け止めた。
たしかにブルペンや、練習試合を通じて「なるほど」と思わされるものが、少なくなかった。
目に付いたところをいくつか挙げていくがまずは、藤浪に触れたい。ここまでは、順調だ。直球も、スライダーなど変化球も、十分な質を備えており、しかもそれが安定的に投げられている。
ただ、打者が立ったところで、その安定したフォームがやや、上体に頼ったものになる傾向があり、ブルペンや、イニング間の投球練習と比べるとばらつきが少し大きくなる。
藤浪に限らずカウントが後手になるとピッチングが苦しくなる。打者がいてもいいバランスで投げられるようにできれば最善。ただ、すぐに習得できなくても、甘くてもファウルを取れるボールがあるのだから、「攻め方」でカウントを稼ぐ方法も頭に置いておいてほしい。
新戦力では、チェンが少し心配だろうか。以前の球威がなくなった分、技術で勝負することになるだろう。それがどこまで通用するか、通用しない場合の見極めをどうするか、がシーズン中、問われることになりそうだ。
ドラフト上位の伊藤将、佐藤蓮は、目を見張るような特徴はないが、プロでやっていけそうだなと思わせる力量は感じた。伊藤将はやや変則ながら、今のところリリースポイントのぶれが見られない。佐藤蓮はオーソドックスなフォームからの力強い球が持ち味だろう。
各チームとも先発6、リリーフが左右それぞれ3ずつの、12人を基本線として微調整を施していく。阪神もチーム事情によるが、この2人のような若い投手はデビュー戦はともかく、先発から覚えさせるのが成長を早めるように思う。
西勇や高橋の復帰見込みは分からないが、それでも12人を選べるレベルにあるのは強みだ。
ただあえて、物足りない部分を指摘すると、全体的な傾向だが特に若い投手の、変化球への意識だ。簡単な話、捕手のミットが動かないような変化球を誰も投げられていない。キャンプも終わりにきて、ちょっとこの精度ではさみしい気がした。
阪神はスタッフ的に、終盤までリードしていれば勝率が飛躍的に高まるだけに、特に先発陣は「最低でも七回までは」という意識でいてほしいし、それを実現するには変化球の制球力は欠かせないものとなる。
布陣は、十分。各投手が実力を発揮できれば優勝できるはずだ。