岡田彰布氏が天覧試合から30年後に放った逆転満塁弾 伝統の一戦通算2000試合
偉大なるOBたちが華麗なプレー、豪快な一打で歴史を積み上げてきた伝統の一戦が、5月15日の対戦で通算2000試合目の節目を迎える。元阪神監督でデイリースポーツ評論家の岡田彰布氏(63)が思い出の一戦、心に残るシーンを振り返った。
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新元号となった平成元年。甲子園が歓喜のるつぼと化した瞬間があった。「大根斬りやったんは今でも覚えとるよ」-。6月26日の伝統の一戦、3点を追う八回2死満塁だった。岡田氏はガリクソンが投じた内角高めの直球に対し、バットのヘッドを立てながら体をきれいに回転させた。
打球は左翼ポール際へ伸びていく。スタンドに飛び込んだ瞬間、聖地のファンは総立ちでダイヤモンドを一周する主砲をたたえた。
「一番のホームランやったなあ。あの時はガリクソンが徹底してインサイドを攻めてきてて、物々しい雰囲気やったんよな。だからあそこも絶対に、内角に来ると思ってた」
その試合中に岡田氏は足首を負傷。チームが巨人に対して連敗中で、ソックスに血がにじむ中、村山監督に出場を志願していた。不穏な空気が漂う敗色濃厚の聖地で、ビーンボールを一閃(いっせん)。阪神の選手が甲子園で劇弾を放ったのは、史上2人目だった。
「チームがずっと負けとったから、止められて良かった」とお立ち台で語っていた岡田氏。伝統の一戦について「個人的に特別な意識はなかったよ。本塁打1本が2本になるわけでもないし」と言いつつも「やっぱりファンやマスコミ、球団フロントの意識は強かったよな。昔からの西と東の関係もあったし。村山さんとか江夏さんとか、投手の人が意識していた感じはあったな」と述懐する。
くしくも逆転満塁弾が飛び出したのは天覧試合から30年という節目の日。長嶋にサヨナラ弾を浴びた因縁を持っていた村山監督は「みんながお返ししてくれた」と静かに笑っていたという。