阪神ドラ1佐藤輝 新人左打者歴代2位タイ19号 高橋由伸氏に65試合で並んだ!
「中日6-2阪神」(23日、バンテリンドーム)
怪物ルーキーが、また偉大な打者と比肩した。阪神のドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)=近大=が1点を追う六回、バックスクリーン右へ一時同点となる19号ソロを放った。新人の左打者では歴代2位の巨人・高橋由伸に並ぶ記録。ただ歴史に名を刻む一発も、勝利には結び付かず。きょうこそ、笑顔で喜べる豪快弾をたたき込む。
“天才バッター”と形容された先人と佐藤輝が肩を並べた。前夜は数センチの距離でスタンドに白球を届かせられなかった怪物ルーキー。一夜明け、正真正銘の豪弾を竜党が占拠する客席に突き刺した。
見せ場は1点を追う六回1死。福谷の外角チェンジアップにリーチを伸ばしながら強振。打球はスタンドめがけて伸びていく。中堅・大島もすぐ足を止め、放物線の行方をただ目で追うだけ。圧巻の一撃は失速せず、中堅右に吸い込まれていく。
涼しげな顔を浮かべ、ダイヤモンドを一周した佐藤輝は「しっかり自分のスイングができました。同点に追いつけるホームランだったので、良かったかな」と淡々と振り返ったが、序盤と中盤に味方の走塁ミスがあり、嫌な流れになりかけていたムードを一変させる大アーチでもあった。
19号ソロで2リーグ制以降の新人左打者最多本塁打数に到達。1998年に巨人・高橋由伸が記録した偉業に並んだ。幼い頃から見てきた高橋の打撃は「天才バッター」という印象が強いと、佐藤輝は懐かしむ。そんな天才が残した記録に、早くも65試合目で到達。アーチスト道を駆け抜けるペースは速い。
「それ(19号)に関してはポジティブに捉えて、次からもやっていきたいと思います」 1リーグ時代に新人左打者最多の20号を放った大下弘(セネタース)と、高橋の本数を超えるのは、もう時間の問題だ。桑田武(大洋)と清原和博(西武)の持つ新人最多本塁打の31号達成も、日増しに期待度が高くなっている。
前打席の四回先頭でも福谷から中前打を放ち、今季22度目の複数安打をマーク。「打ち損じが少なくなってきているので、自分のフォームが良くなってきている」と自信を見せる。矢野監督も「対応力があるし、本塁打になるのもテルの魅力。相手が本塁打を警戒した中で打ったのも価値がある」と絶賛だ。
“メモリアル弾”を打つも敗戦の悔しさからか、佐藤輝に一切の笑顔はない。「しっかり明日勝って勝ち越して帰るのが一番大事」と口調は熱を帯びた。6月に入り、月間打率・348と絶好調の背番号8。求めるものは勝利につながる一打、一発だけだ。