暗黒時代には前期と後期がある 戦力整備の失敗と震災が大きな要因元阪神社長語る【2】

 中村監督と三好球団社長=1993年11月(安芸)
必勝祈願を行う中村監督(左)と三好球団社長=1991年4月
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 1990年代にタイガースの球団経営に携わった元阪神球団社長の三好一彦氏(90)の、デイリースポーツ・オンライン連載「三好一彦の遺言」第2話は暗黒時代。試練の時は長く続いた。

 タイガースを語るうえで避けて通れないのが、暗黒時代と呼ばれる低迷期だ。

 この長い冬の時代を三好は前期と後期に分けて説明する。

 三好「ひと言で暗黒時代と言われるが、実は2回に分かれてるんです。最初は1987年の最下位から。亀新フィーバーの92年にいったん抜け出したかと思われたんですが、そのあとに2回目があります」

 長期低迷の入り口は第2次吉田政権下で85年に日本一となったその2年後、「地獄を見た」という87年の最下位だ。

 亀山、新庄らの若手が伸びてきた92年は2位に躍進したが、そこから再び転落する。

 三好が言う暗黒時代の15年間はAクラスが1度だけで、最下位は10回を数えた。その原因は何なのか。

 三好「主に戦力整備に問題がありました。優勝したあと掛布や真弓、岡田、佐野らの力が衰え戦力ダウンしたのに、新旧交代がうまくいかなかった。そして阪神・淡路大震災。このダメージが大きかったんです」

 当時1軍の中村監督や藤田平2軍監督は自宅が損壊し、一時鳴尾浜の虎風荘に寄宿。選手や球団職員の多くが被災し、「異様な状態だった」という。

 三好「阪神電車の(石屋川)車庫がやられましてね。全線開通したのが6月下旬。復旧にお金がかかったこともあり、95年と96年のドラフトは4人しか取れなかった。(中村、藤田両監督には)不自由させました」

 幸い甲子園球場は配管などに破損が見られた程度で、高校野球のセンバツ大会は開催された。だが、阪神のオープン戦は住民感情への配慮から日生球場などを借りて行った。

 震災以降の成績は2001年までの7年間で最下位が6回。暗黒時代の後半は「歯を食いしばって耐えた時代」でもあった。

 三好自身、球団社長として在籍したのは90年12月から98年10月までの8シーズン。つまりこの長期低迷の前半部分は、久万俊二郎オーナーの信任を得て“裏方”としてかかわった。

 さらに遡ると、田中隆造オーナー、小津正次郎球団社長時代から本社の秘書部長の立場で、監督人事などの重要案件に関する処理を見てきた。それだけに球団の“暗部”も熟知していた。

 金田正泰、吉田義男、後藤次男、D・ブレーザー、中西太、安藤(統男)統夫、村山実…何人もの監督が不成績の責任を背負い、電鉄本社の意向にも左右されて、首のすげ替えが繰り返された。

 三好「成績が悪ければ監督を代える-の繰り返しでした。そしてチーム運営も監督任せ。これでは球団に何も残らない。何でもかんでも監督の責任にせず、球団と一緒にやらないと。中村の間に、しっかりした球団にしたかったんです」

 2年目を戦い終えた中村は再び最下位となり、三好に進退伺いを提出した。

 三好「負けが込んだことで“辞めさせてくれ”と言ってきた。それこそ暗黒時代ですわな。しかし、球団の責任でもあるから君1人で苦しむことはない、来年も再来年もやってもらう、オレも一緒に戦うと言ったんです。ですから彼のことを私は“戦友”だと思ってます」

 球団社長として1年間、中村野球を観察していた三好は「3シーズン目をどう戦うか」を中村と話し合った結果、新旧交代に踏み切った。

 三好「オマリーと和田だけ残して入れ替えました。新庄、亀山、八木、久慈、捕手は山田、一塁は大洋から来たパチョレック…。ただ軋轢はあった。ベテランが残っていたのに総替えでしたから。打席に立ちかけていた岡田(彰布)に代打が送られたことがあってね。あれはモメたなぁ」

 しかし、この決断がラッキーゾーンの撤廃と歩調を合わせ、翌92年の快進撃へとつながっていった。

(敬称略/宮田匡二)

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