【阪神ドラフト選手特集・鈴木勇斗(3)】分かっていても当たらない最速152キロの礎
10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた8選手(1~7位、育成1位)の連載をお届けする。2人目はドラフト2位・鈴木勇斗(21)=創価大=がプロ入りの扉を開くまでの道のりを振り返る。
◇ ◇
創価大進学後も投手として活躍した鈴木だが、確かな自信を得た試合がある。昨年11月11日、関東地区大学野球選手権大会準決勝の上武大戦。「分かっていても当たらない」と声が上がるほど、衝撃の直球を投げ込んだ。
3点リードの六回途中から登板して150キロ台を連発。最終回は、前年に日本ハムから3位指名を受けた4番・古川の4球目に自己最速の152キロをマーク。5球目の151キロ直球で空振り三振に抑えた。3回2/3を完全投球の9奪三振。圧巻の内容だったが、鈴木は別の部分で手応えを感じていたという。
「前日の国際武道大戦で完投勝利していて。投げていて疲労のある中でもあれだけのピッチングができたというのは、自分の中でも自信になりました」
156球の熱投翌日に、自己最速をたたき出すタフさを発揮し「ちょっとずつプロの世界が見えてきたのかな」。これまでの努力が成果となって表れ始めたことをマウンドで実感していた。
創価大には名物トレがある。グラウンド横での坂道ダッシュだ。堀内監督は「ホークスの田中や石川なども坂道を走って150キロを出した。今、所属する控え投手も140キロ後半は出ますしね。大学が山の中にあるので坂道も多く、坂を走らないといけないチーム。それで鈴木も下半身が強くなったと思います」と力説する。
アスファルトの坂道を100メートル、多い時には200メートルをダッシュする練習を繰り返した。「自分も大学から150キロが出るようになりました。他の大学にはなかなかないような環境だと思うので、下半身の強化には大きくつながったのかな」と鈴木。“150キロの坂”で鍛錬を重ね、強固な土台を形成できた。
3年秋からはドジャース・カーショーを参考にしたフォームに変更。152キロを記録した上武大戦でもカーショーばりの“2段モーション”で勝負した。これも球速や制球力が向上した要因につながったと明かしており、プロの扉を開くきっかけとなった。
阪神入りが決まり、高校時代は縁のなかった甲子園がこれからの主戦場となる。「高校の時に甲子園大会の観戦に来た時は、スタンドでかちわり氷を食べていました(笑)。鈴木勇斗を指名して良かったと思われるように頑張ります」。座右の銘である「耐雪梅花麗」を胸に、プロの世界へ羽ばたいていく。