阪神・岩田稔 タテジマ一筋16年…引退登板で自己最速狙っていた

 2021年の野球界も多くの名場面が誕生した。プロ野球はヤクルトの日本一で幕を閉じ、東京五輪は日本代表が金メダルを獲得。2年ぶりに春夏の甲子園も開催された。取材にあたったデイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。第2回は阪神担当・杉原史恭が、引退を決断した阪神・岩田稔投手(38)の秘めていた思いを明かす。

  ◇  ◇

 もしも、引退登板が実現したら。10月中旬、岩田稔はイメージを膨らませていた。「自己最速を狙いにいく。151か152キロ」。ニヤリと笑う表情からは自信がうかがえた。

 7月28日のエキシビションマッチ・ロッテ戦(甲子園)。鳥谷との対戦で149キロを計測した。年明けに新型コロナに罹患(りかん)し「自分の気持ちに負けた」ことを引退の理由に挙げたが、2021年38歳を迎える体は元気いっぱいだった。

 「いけるかもしれない。ファンの皆さんの前で最後に投げられたらうれしいですね」

 引退試合の実施はチーム状況により、流動的とされていた。阪神は10月8日からのヤクルト3連戦(神宮)に手痛い負け越し。ツバメに優勝マジックがともり、厳しい状況に立たされたが、岩田稔は「頑張れ!しかない」と奇跡を信じた。タテジマ一筋16年。悔いはないが、心残りはあった。

 「優勝できてないことがやり残したこと。小学校の時から優勝に縁がない。高校でも甲子園に出てないし、大学でも優勝していないから。巡り合わせもあるけど、運命かな」

 シーズン最終盤、崖っぷちに立たされた虎は驚異的な粘りを発揮する。10月12日・巨人戦(東京ドーム)からの10試合は6勝1敗3分け。同4勝5敗2分けと足踏みのヤクルトに重圧を与えると、ムードも変わってきた。

 今季最終戦となった10月26日・中日戦。阪神が敗れ、ヤクルトが勝てばリーグ優勝が決まる一戦。左腕はおそろいの「岩田稔Tシャツ」を着たチームメートに「僕もビールかけに交ぜてください」とエール。最後まで執念を燃やした虎だったが、中日に完封負け。ヤクルトがDeNAを下し、16年ぶりのVは消えた。それでも岩田稔には、後輩の姿が誇らしく映った。

 「すごかった。投手も野手も。あんなに成長した姿を見られたので、何かうれしかったですね」。引退セレモニーでは梅野とバッテリーを組み、ラストボールを投じた。「垂れた真っすぐ。持ち味のボールでした」と苦笑い。スピードガン表示はなくても、左腕の表情は晴れやかだった。

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