阪神・石井大 救われた藤浪からの言葉 開幕戦で先輩の勝ち星消し涙 ホッとした優しさ
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回は阪神・石井大智投手(24)が悔しさから涙を流した、3月26日の開幕戦・ヤクルト戦(神宮)。阪神担当・今西大翔記者(23)が、開幕投手を務めた藤浪晋太郎投手(27)がかけた言葉とともに、来季の逆襲に燃える右腕の思いを振り返る。
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3月26日の開幕戦・ヤクルト戦(神宮)。3-2と緊迫する七回のマウンドに、石井が向かった。藤浪の勝ち星がかかる重要な局面。「もちろん準備はしていましたけど、まさか開幕戦で投げられると思ってなかったので…。めちゃくちゃ緊張しました」。無我夢中で腕を振った。
山田から始まる、強力ツバメ打線のクリーンアップとの対戦。先頭・山田はオール直球で空振り三振に斬った。ただ、村上は四球。その後、2死二塁として塩見に同点の適時三塁打を浴びた。
唇をかみ、悔しそうにベンチへ下がる。「そんなに甘くはいかないな」と肩を落とし、涙がこぼれてきた。すると、先発の藤浪がスッと駆け寄り、言葉をかけてくれた。
「去年、俺もリリーフを経験した。勝ち試合とか1点差で投げるしんどさ、プレッシャーは感じてるところがあった。自分もそういう経験をしたから、これで勝ちがなくなっても、むしろ七回まで投げられなかった俺が悪いから」
勝ち星を消したにも関わらず、慰めてくれた先輩右腕。「少しはホッとしたというか、次を迎えられる」と優しさに救われた。ただ、28日の同戦では山田に被弾。春季キャンプで一気に評価が急上昇し、勝ちパターンの一角として期待されたが、8月21日の中日戦を最後に1軍登板はなく、悔いの残るシーズンとなった。
来季のリベンジに燃えているのが、契約更改でも名前を挙げたヤクルト・山田。今季は3打数2被弾と完敗した相手だ。
「失敗はマウンドでしか返せない。本当に素晴らしい選手がターニングポイントになっているのは光栄。抑えたら、自分の中で成長は感じられるかなと思う」
課題は変化球の精度。フェニックス・リーグではプロ初先発し、5回2安打無失点と好投。カーブを生かし、投球の幅を広げている。目指すのは、今季の開幕戦で任されたような、僅差の終盤にマウンドへ上がることだ。
藤浪からの金言、山田という強打者との対戦など、1年目から多くの財産を得た。佐藤輝、伊藤、中野と同期の活躍を見て、負けたくない気持ちも芽生えている。2年目の石井は、そびえた立つ高い壁を必ず越えていくはずだ。