【阪神ドラフト選手特集・豊田寛(1)】東海大相模門馬監督と鍛えた4番としての人間性
10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた8選手(1~7位、育成1位)の連載。6人目はドラフト6位・豊田寛外野手(24)=日立製作所。
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小学生ではベイスターズジュニアに選出。中学でも名門・戸塚シニアに所属した。高校では東海大相模の4番として、2015年夏の甲子園大会優勝。球歴だけ見れば、寛はエリート街道を歩み続けてきた。
しかし、その道中では何度も壁にぶつかった。度重なるけが、極度の不調…。全国制覇を遂げた夏も「準々決勝までは全然だったんですよ」と話すのは、門馬敬治前監督だ。「明るいのは明るいんですけど、悩んでしまうと抜け出せなくなる」
門馬氏は準々決勝後の全体練習が終わると「お前、来い!」と室内練習場を借りて、2人きりの居残り練習に連れ出した。真夏の室内練習場で門馬氏が投手を務め、2時間の打ち込み。「まだ、打つんか?」と門馬氏が“ギブアップ”するまでバットを振り続けた。
すると、準決勝ではオコエ(現・楽天)擁する関東第一戦で、聖地初アーチとなる2ラン。さらに、決勝では4安打3打点と大暴れした。「人間性を鍛えられた」と寛。不振であっても、門馬氏が4番に据え続けた理由は、その人間性だった。
「みんなが豊田に回そう、回そうとしていた。結果が出なくても、こいつに頼りたいと思わせる。打たなくても代えられない、代えたくないっていう風にさせるのが、豊田寛だったと思いますね」
同期には、小笠原(中日)、吉田凌(オリックス)もいた。「その2人に追いつきたい」と寛は背中を追う。門馬氏は2人と比較して「いいのかわからないけど、(強みは)優しさかな」と言い切った。
「優しさっていうのは、人から見れば勝負事には弱いじゃないですか。いいことではないと思うんですけど、それは豊田寛の持ってる最大の強みだと思いますね。他に与える影響が、認められたものだと思いますね」
寛が門馬氏の言葉で大切にするのは「謙虚」。真面目で、愚直に練習へ取り組み、チームメートからの信頼を勝ち取った。この人間性の良さは、プロでも強みになると門馬氏は言う。
「一年、一瞬が勝負の世界に行く。甲子園で生き生きと野球をやってもらえることを期待しています。活躍しなきゃダメだぞという強い思いですね」。名将が寛の背中を押した。そして、もう一人。寛のプロでの活躍を断言する人物がいた。
【アラカルト】
◆生まれ 1997年4月28日。神奈川県横浜市出身
◆サイズ 177センチ、85キロ
◆投打 右投げ右打ち
◆球歴 小学1年から野球を始め、小学6年では横浜ベイスターズジュニアに選出。中学では戸塚シニアに在籍。東海大相模では、4番として15年夏に全国制覇。国際武道大では、1年春からベンチ入りした。日立製作所では、2年連続で都市対抗野球出場
◆趣味 サウナに入ること
◆目標の選手 鈴木誠也
◆好きな食べ物 豚骨ラーメン
◆座右の銘 「努力 忍耐 根性」(国際武道大・岩井監督の言葉)