阪神正捕手争いの行方は?「梅野に求められるのは内角球の有効な使い方」と高代氏
このオフ、FA権を行使せずに阪神残留を決めた梅野隆太郎捕手(30)だが、立場は決して安泰ではない。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「梅野が正捕手争いに勝つにはインサイドワークに磨きをかけること。この1点に尽きる」と言い切った。
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梅野が残留したのはチームにとって本当に大きい。仮にFA宣言していれば、いろんな球団から声がかかっただろう。
セ・リーグのライバル球団である巨人やDeNAは、おそらく手を挙げていたと思う。パ・リーグも複数球団が名乗りを上げていたのではないか。
このオフ最大の目玉選手になっていたのは間違いないね。実績があり日本代表にも選ばれた貴重な捕手だ。
他球団に移籍されると、やはり気持ちが悪いものですよ。サインなどは毎年変わるから関係ないが、捕手という特殊性から選手のプレースタイルを、すべて掌握しているわけだからね。
例えば“西勇の外角スライダーはみんなボール球”という情報などが相手に渡ることになる。そう考えると、マイナス材料の大流出を阻止できただけでも大きい。
ただ残留だからといって、レギュラーの座が保証されているわけではないだろう。昨季の終盤、坂本に先発マスクを譲っていたことでも分かるように、境遇は白紙状態ではないか。
昨季こそ数字は上がらなかったが、梅野の盗塁阻止率は高い。さらに打力があり得点圏打率も優れている。いわゆる打てる捕手だ。しかし、インサイドワークにやや弱点をもっている。ここに唯一の課題がある。
盗塁阻止率が下がり打率が下がれば、弱点が目立つようになる。逆に坂本はインサイドワークで梅野を上回る。それが昨季終盤、坂本の先発起用が増えた理由だろう。
具体的に梅野には何が足りないのか。それは内角球の使い方。ひとつ間違えば長打になる危険な球だから、要求するには恐怖心が先に立つ。
だが、この内角球を巧みに使えば、配球面で優位に立てる。早いカウントで、しかも立て続けに要求することも時には必要だ。
単なる“強気”という言葉で片付けることのできない打者を打ち取るための工夫。投手の制球力と一対のものではあるが、それも含めてサインを出すのがリード。
内角球をうまく使う坂本と外角中心に組み立てる梅野。2人のリードは好対照だ。
内角球を要求する時でも、少し外したい場合、坂本はバッターボックスのライン上にミットを構え、大きなゼスチャーで“ここへボール球を投げろ”と投手に指示する。
梅野には少し曖昧さが見られ、それがミットの位置に出る。ボール球の要求はサインだけではなく、体で示すことも大事。
これは一例に過ぎないが、こういう空気感が投手に対して疑心暗鬼を誘うこともある。矢野監督の不満はこのあたりにあるのではないか。内角球の使い方を問われてきた梅野自身も、自分に足りない点があるのは分かっていると思う。
ではなぜ、ここまでの結果を残せてきたのか。阪神投手陣のレベルの高さが、梅野の弱点を補ってくれていたという見方もできる。
梅野に求められるのは、相手に嫌がられるリードで的を絞らせないこと。怖いだろうが、捕手として大切な闘争心を失わず、自信をもって内角を攻める。これができれば評価はさらに高まるはずだ。
残留を決意したからには正妻の座をもう一度、奪い取る意気込みだと思う。これまでとは違う梅野の“闘争心”に期待したいね。