阪神・藤浪を生き返らせたのは徹底した右打者への抜け球対策 中田良弘氏の目
「巨人1-5阪神」(20日、東京ドーム)
阪神・藤浪晋太郎投手(28)が7回6安打無死四球、1失点で今季初勝利を挙げた。無死四球は2試合連続。デイリースポーツ評論家の中田良弘氏は制球力向上の理由に「投球フォームの安定」「マウンドでの余裕」「徹底した抜け球対策」の3つを挙げた。
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藤浪の投球で特筆すべきは2試合続けて無死四球で終えたことでしょう。あれほど制球に苦しんだ投手が見違えるような投球。今までは“次はどうかな?”と疑っていたものだが、これでだいじょうぶというレベルにまできたね。
投球フォームで言うと、踏み込んだ左足にウエートが乗ってリリースまでの動きが一定しているため、いいポイントで投げることができている。
悪いときは上体が突っ込んで下半身と連動せず、腕の回転が不安定になって抜け球がでる。そういう球がほとんどなくなっている。
それと余分な力を抜いて、リリースの瞬間にだけ力を入れて投げているのも分かる。あのギクシャクしたロボットのような感じが消え、関節を軟らかくじょうずに使っている感じ。全体のバランスが非常によくなった。
ここ数年の藤浪はマウンド上で常にフォームのことを考えているのか、自分との闘いに終始しているようだった。
今はイメージ通りのボールを投げられるようになって余裕ができたのかな。周りが見えるようになり、打者との勝負がきている。
もうひとつは抜け球対策。前回登板の中日戦でも感じたが、右打者を迎えたケースで梅野は、フォークボールを要求するケースを除いて常に外角に構えている。この日は全球そうだった。
結果、左の重心に対して外角高めへ1球抜けただけで、右打者へは軽い逆球が数回程度。梅野が捕れないほどの極端なボール球はなかった。
間違いなくこの抜け球対策が効果を発揮している。逆球は“配球”の一種にもなるから悪くないしね。
19日の巨人戦では西勇をリードした坂本が、内角や外角にミットを動かしていたが、これは制球力抜群の西勇だからできる芸当。藤浪には藤浪用のリードがあるということ。彼の球威があれば、徹底した外角攻めでも抑えきれるということだろうね。
左打者への課題は残るが、丸に一発浴びた後、中田と岡本和をしっかり抑えたところも評価できる。5点差あったとはいえ、冷静に後続を料理したところがいい。
6日の広島戦ではスライダーのコントロールミスで2つの死球を与えたが、ガタガタと崩れることはなかった。この試合も含めると、3試合連続で安定した投球をしている。
それにしても藤浪は体が強いね。入団以来10年、常に全力投球。まるで抑え投手が先発をやっているようなものだからね。肩やひじを痛めても不思議じゃないけど、そのタフさは凄いよ。だから蘇ってきたのかも。