矢野阪神 強い団結力もミス多発、追求した「夢と理想」の結果 不足していた勝利への執念

 団結力の象徴・虎メダルを掛ける矢野監督
 度重なるミスで幕を閉じた矢野阪神
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 今季限りで退任する阪神・矢野燿大監督(53)が15日、大阪市内の電鉄本社で藤原崇起オーナー(70)にシーズン終了報告を行い、会見に臨んだ。何度も涙ぐみ、言葉を詰まらせる場面もあった、約50分に及ぶ異例のロング会見。最後は笑顔の“矢野ガッツ”で締めた4年間の監督生活。デイリースポーツ阪神担当キャップが、4年間の矢野阪神を秘話とともに振り返る。

  ◇  ◇

 矢野監督には壮大な夢がある。コロナ禍前、監督就任1年目のオフだったか。ある宴席で熱く、真剣に語っていたのを思い出す。

 「日本の野球界、スポーツ界を変えたいねん。苦しい時こそ笑顔で楽しんで、失敗を恐れずにどんどん挑戦する。プロでそのスタイルを貫いて結果を出すことで、少年野球から変えていきたい」

 退任会見でも「僕の夢は続く」と言った。阪神での監督は、いわば夢の実現への過程。注目が集まる最高峰の舞台で結果を出し、自分の信じたスタイルに説得力を持たすことが目的のひとつだった。

 また最近では「夢と理想を言い続けた」と頻繁に口にするようになった。時には「もちろん目の前の勝利も大事やけど、選手の背中を押すことや、選手の引退後の人生も大事」とも話した。

 それを前提に4年間を振り返ると、すべての手法の根底にある考えは一貫していた。例えば失策を犯した選手をとがめない。そして、打たれた投手、ミスした選手には「攻めた結果やろ。萎縮せんと次も挑戦していってくれよ」と翌日直接語りかけた。多くの批判を受けた、選手に複数のポジションを守らせる考えもそう。「試合に出るチャンス、選手の可能性が広がる」と意図を力説した。

 果たして、その「夢と理想」を追った「俺たちの野球」はプロの舞台で成功したのか?4年間すべてでAクラス入り。監督就任初年度から3年以上のAクラスは球団史上初のことだ。もう負けられないところから6連勝を決め、CSを果たした2019年、開幕からの大型連敗から巻き返した今季もそう。矢野阪神は確かに信じられないような団結力で、しぶとさを見せることがあった。

 一方で結局4年間、失策数はリーグワーストのまま。接戦で競り負ける。肝心なところでミスが出る。王者ヤクルトとの差を痛感させられたCSファイナルSの結果が象徴するように、どこかアマチュア的、部活的な雰囲気は、プロで求められる勝利への執念が不足していたように思う。

 『世の人は我を何とも言わば言え 我なす事は我のみぞ知る』。矢野監督が気に入っている、坂本龍馬の言葉だ。キャンプ直前に退任を発表した今季は、よりその考えが濃くなっていたように思う。

 最後の最後まで周囲の批判を恐れず、信念と理想を貫き通した矢野野球。特に精神論において、若い選手らに残したものは多かったはずだ。そこに細部まで勝ちにこだわる岡田野球が加味されることで、頂点を獲れるチームへと進化することを切に願っている。(デイリースポーツ・和田剛)

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