【ドラ1森下翔太の素顔 番外編】少年時代に〝やる気スイッチ〟を押した「父の自作チケット」
父から渡される“チケット”が原動力だった。阪神にドラフト1位で指名された森下翔太外野手(22)=中大=が小学生の頃に集めた“練習チケット”を27日、独占入手した。ご褒美がもらえる券をモチベーションに、バットを振り続けた森下。野球に打ち込ませるためにあらゆる工夫をこなした父・善文さん(53)が、息子との特訓秘話を明かした。
息子の野球熱をなんとか高めようと必死だった。父・善文さんは「プロ野球選手にさせるのが一つの夢だった」。森下が小1で野球を始めると、自作したチケットで一人息子の“やる気スイッチ”を押した。
「しょうたのれんしゅうがんばった けん」。1枚が100円分。森下が1日練習すれば2枚、半日練習すれば1枚を手渡した。
森下はゲームにも夢中になった。すると、善文さんが「なんとか練習させるために」と頭を巡らせ、森下家独自の練習方法が生まれた。素振りをするクセをつけさせるために作ったのが、「素振り引換券」。素振り20回でシール1枚を渡し、20枚たまるとゲームセンターにある100円ゲームを一回できる“ご褒美”に交換した。
「お金で釣るのはダメだと思ったんですけど、プロ野球選手も(お金を)稼ぐ職業。その練習みたいな感じになればいいかなと」。高校ではエースを務めるなど、18歳まで野球に打ち込んだ善文さん。息子にも野球の楽しさを伝えるため、次々とユーモアあふれる練習法を編み出した。
集中力がないと感じたときは、森下が好きだったポケモンカードをリビングの天井からひもでつるす。「打って落としたらあげるよ」と話すと、森下は目の色を変えてバットを手にした。
日課はリビングに置いた収球ネットに打ち込むティー打撃。カラーボールの色を指定して打たせたり、ボールに書いた数字を読ませながら打たせたりと、息子が退屈しないようにさまざまなバリエーションを考案した。
自宅リビングの白い壁に刻まれた無数の傷は、森下がバットを振って壁をこすったときのもの。傷が増える分だけ練習するクセも身についていき、小学高学年になると自発的にバットを振るようになった。「楽しいときも嫌なときも半々くらいだった」と特訓を振り返った森下。それでも、「あの練習があったから今の自分がある」と父への感謝を口にした。
「プロに入ることが目標じゃなく、活躍することが目標だったと思う。頑張ってほしい」と息子にエールを送った善文さん。実家のリビングで培った打撃で、森下は聖地を沸かす。