阪神“岡田野球”は独特で評論家の解説力が試される?高代氏「緻密で奥が深い」

 阪神は15シーズンぶりに復帰した岡田彰布監督(64)が早くもチーム改革に着手し始めている。その独特の野球観を知る高代延博氏(デイリースポーツウェブ評論家)は「緻密で奥の深い野球が期待できるし、解説者としての腕も試される」と語り、新生タイガースに強い関心を示した。

 岡田監督とはオリックス時代、監督とヘッドコーチという関係で一緒に仕事をさせてもらったが、野球の見方や捉え方が本当に鋭かった。

 プレー内容から選手起用や采配、練習の中身など、あらゆることに対して繊細で、チーム全体に目が行き届いている感じだったね。

 独特の野球観は緻密で非常に奥が深かったから、選手に限らずコーチも野球というものを知るうえで、いい勉強になったと思う。

 (高代氏は2011年~12年にオリックスでヘッドコーチを務め、三塁コーチャーも担うなど岡田監督を支えた)

 ここで当時を振り返り、独自性の高い“岡田野球”の一端をいくつか紹介してみたい。

 まず最初に思い出すのは、ロッテのエースだった成瀬(善久投手)を打ち崩した試合だね。

 当時、得意のスクリューボールを武器に活躍していた成瀬に対してオリックスも手を焼いていたんですよ。特に右打者にとって外へ逃げるボール球は厄介なことこの上ない。

 一般的には右打者なら、このスクリューを引っかけることなく、押っつけて右へ打つ。それが攻略法という考え方だった。真っすぐもよかったから右へ右へという意識。

 しかし、あるとき岡田監督がこう言った。

 「左ピッチャーは引っ張らなダメよ」

 成瀬の球を引っ張れと言う。引っ張るという意識があれば自ずと踏み込んでいくからだ。踏み込めば体は開かない。踏み込まないから開く。だから引っかけるし、ボール球を追いかける。

 「引っ張る」と「引っかける」はまったく違う。意識の持ち方ひとつで成功した、この“スクリュー退治”は会心だった。

 次に強く記憶しているのが、練習はあくまでも試合のためにあるという姿勢だ。

 キャンプ中の練習だったが、二遊間の併殺プレーに時間を割いていたとき、岡田監督が「速い球を投げろ」と言いましてね。

 これも一般的には「捕球しやすい球」「送球動作に移りやすい球」を投げるよう指示するものだが、それだけでは併殺を完成させるスピードが上がらないという。

 まず第一に速い球。送り手の球が速いと、受け手の姿勢も自然と低くなってフットワークを利かせ、悪送球への備えもできる。実戦での送球は速くなるし、ボールがそれることもあるのだから練習の段階から、そうすべきという理屈ですよ。

 もうひとつ、挟殺プレーでの“無声”練習も岡田監督ならではだった。とにかく「声を出すな」という。

 普通は塁間で走者を挟んだ場合、ボールの送り手と受け手の間でタイミングを図り、声を出してボールをもらいタッチに入る。

 しかし、試合になるとファンの歓声で声が掻き消され、意味がないというのが理由だった。だからこのタイミングを知るための勘を養えと。内野手出身の岡田監督だけに説得力があったね。

 今、秋季練習でもいろいろとアイデアを出して練習をしているようだが、その発想にはすべて根拠がある。阪神の野球は間違いなく進化していくだろう。

 シーズンが始まれば試合の中で“岡田野球”が随所に見られるはず。それを解説するのは楽しみだが、同時にこちらの腕を試されるような気もするね。

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