【阪神ドラフト選手特集・井坪陽生(2)】投打に“持ってる”天才肌もU15代表で味わった悔しさ
10月のドラフト会議で、阪神から指名を受けた7選手(1~6位・育成1位)の連載をお届けする。第3回はドラフト3位の井坪陽生外野手(17)=関東第一。
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中学になると、兄・朝陽さんを追って八王子シニアに入団。全国屈指の強豪チームの中でも、陽生はたぐいまれな才能を発揮していった。和田義盛監督(67)は「持って生まれた天性でしょうね。大舞台でも強いのが良いところだと思います」と振り返る。
当時は投手としてもプレーし、チームのエースを担った。「ピッチングもバッティングも一流というか、ずばぬけてましたね」と和田監督。印象深い試合があるという。中3夏の全国大会を懸けた関東大会予選。楽天・鈴木大やヤクルト・小沢らプロ野球選手も輩出している強豪・静岡裾野シニアに対し、陽生はノーヒットノーランを達成。「大事な場面でも物おじしない」という持ち味を遺憾なく示した一戦だった。
「打」でも存在感を見せた。打撃練習に力を入れている同チームでは、多い時には1日500スイングほどを打ち込む。その中でも「もう打球が強くて鋭かったです」と和田監督。持ち前のセンスに加え、厳しい練習で打撃の基礎をたたき込んだ。同じく中3夏に出場したジャイアンツカップの二回戦・富山シニア戦では、ジャイアンツ球場の左中間に飛び込む満塁弾を放った。「多分、狙ってるなと思ったら。もう打った瞬間でしたね」と指揮官も仰天。チームも最終的に全国3位という成績を残し、陽生自身も「すごく印象に残っています」という会心の一発となった。
そんな天才肌の男が、野球人生の中で大きな悔しさを味わった経験がある。ジャイアンツカップ後にU-15日本代表に選出されて出場したU-15アジアチャレンジカップ。全国レベルのメンバーの中、全試合3番を任されチームも優勝を飾ったが、計9打数1安打と結果を残すことができなかった。
「すごく刺激を受けました。まだまだだなと。高校でレベルアップしたいという気持ちが湧いてきました」と陽生。あまり感情を表に出すタイプではないが、心の中に火が付いた瞬間だった。
◆井坪 陽生(いつぼ・ひなせ)2005年3月17日生まれ、17歳。東京都出身。177センチ、86キロ。右投げ右打ち。外野手。関東第一から2022年度ドラフト3位で阪神から指名を受ける。関東第一では1年秋からベンチ入り。甲子園出場なし。高校通算32本塁打。好きな食べ物は伊勢エビ。