阪神・川藤OB会長 岡田監督に本音「監督でも経験しないと、意味があらへんのと違うかな」
18年ぶりの“アレ”を目指す岡田彰布監督(65)へのエール企画「アレが見たい」-。第14回は阪神OB会長の川藤幸三氏(73)。1985年、当時選手会長だった岡田監督と一緒に球団唯一の日本一へと歩んだ間柄だ。周囲の大きな期待を背に再登板となった後輩に対し「覚悟を決めてやってもらいたい」と本音のエールを送った。
わしらOB会の立場から言えば、常にタイガースを強くしてもらいたい、いいチームにしてもらいたい、ファンに喜んでもらいたいというのが一番の思いやね。それは岡田監督も同じ考えをしとると思うよ。
タイガースが好きな人にとっても、やっぱり優勝して、強くしてもらいたいというのが本音やと思う。まずはリーグの覇者となり、それと過去に1回しかなっていない日本一。ましてや、岡田監督はそれを現役時代に経験しとる。監督でも経験しないと、今回も監督になった意味があらへんのと違うかな。
日本一になった当時(1985年)、チームは掛布、バース、真弓、佐野、長崎、永尾らベテランが多かった。今のようにおとなしい者ばかりでなく、もろに表情や口に出したりする連中ばかりやった。岡田は選手会長として、そういう連中をまとめるのは大変やったと思う。
一つの例として、吉田監督が優勝間近になっても「俺たちは弱い。挑戦者だ。だから常にそういう気持ちでいこう」と勝っても勝っても同じことを言うから、「おい、オカ。監督のところに行って、『何をお題目ばかり言うとんや』と言うてこい!」と行かせたんや。すると、その日から「俺たちはもうここまで来たら優勝しないと殺される」と監督の言葉が変わったんや。そういう面でも岡田が選手会長として先頭に立ってやれていたということやわな。
これだけ世の中が若返りとなっとる中で今回、岡田を監督にしたのは、わしは悪いことではないと思う。その代わり岡田監督には球児、鳥谷、今岡ら若い者がおるんだから、そういうやつらをどういう指導していくのか。優勝という目標とともに、将来の指導者を育て上げていくのも一番大事なことじゃないかと思うよ。
プレッシャーをかけるようやけど、タイガースでは2回目、オリックスを含めると3回目の監督になる。いろんなところからの期待が大きいけど、監督とは期待ばかりでやれるものとは違う。チーム状況を考えると悪くはないけど、もろ手を挙げて優勝できるだけのところでもない。今はそういう立ち位置のチームや。そこの頭になったんやから、中途半端な期待をするよりも、本当の覚悟というものを腹に決めてやってもらいたいというのがわしの本音やわな。
◆阪神の85年シーズン 月間勝率5割を切った月はなかったが、7月は9勝9敗で勝率.500、8月は13勝10敗1分けで.565だった。しかし9月は13勝5敗1分けの.722。優勝へ向けてスパートを切ると、10月は8勝5敗1分けの.615。10月16日にリーグ優勝を達成した。
◇川藤 幸三(かわとう・こうぞう)1949年7月5日生まれ、73歳。福井県出身。若狭高で67年春夏、エースとして甲子園出場。同年度ドラフト9位で阪神入団。代打の切り札として活躍し、85年の日本一に貢献。86年限りで引退。現役時代の通算成績は771試合に出場し、895打数211安打、打率・236、16本塁打、108打点。2010年から阪神OB会長。