頑張れ藤浪 甲子園に別れ 「全部ひっくるめて、阪神タイガースの藤浪晋太郎で良かった」
阪神からポスティングシステムを使って米大リーグ・アスレチックスに入団した藤浪晋太郎投手(28)が21日、甲子園球場のグラウンドで会見を行った。栄光と挫折を経験したプロ10年間を振り返り「全部ひっくるめて、阪神タイガースの藤浪晋太郎で良かった」と感謝。チームメートからのビデオメッセージや球団からの粋な演出に感極まりながら、メジャーでの活躍を誓った。
サプライズの連続に藤浪は涙を必死にこらえた。会見終盤、チームメートからのビデオメッセージがビジョンに流れ、「1人やったらたぶん泣いていると思います」と感激。阪神園芸による花束贈呈やウグイス嬢のアナウンスまで響く盛大なセレモニーに、気持ちは一段と引き締まった。
「会見させてもらえること自体がありがたい。めちゃくちゃ貢献して出て行くかのような(笑)。すごい送り出し方をしてもらっているので、より頑張らないといけないと思いました」
会見は「自分を育ててくれた、一番思い入れのある球場」と語る甲子園のグラウンドで開かれた。大阪桐蔭で春夏連覇を達成し、プロ1年目から3年連続2桁勝利をマーク。若きエースへ上り詰めた矢先の深刻な制球難…。頂点からどん底に突き落とされる中、最も印象に残る試合が、299日ぶりの1軍先発となった19年8月1日・中日戦(甲子園)だ。
五回途中降板ながら、ベンチに戻る藤浪にスタンドから拍手が降り注いだ試合を挙げ、「大声援をもらったのを覚えていて。すごく応援してもらっているんだなと感じた試合でしたね」。人一倍、濃密な10年を過ごしたからこそ、今では心の底からこう言い切れる。
「本当にいい経験とつらい経験とかいろいろありましたけど、全部ひっくるめて、阪神タイガースの藤浪晋太郎でしか経験できなかった。阪神タイガースの藤浪晋太郎で良かったなと思ってます」
新天地で戦う覚悟は固まっている。「まずはしっかりアピールしてローテーションを勝ち取って、年間、穴あけず守ることが自分の中では一番大事だと思ってます」。今後は甲子園、鳴尾浜を拠点に自主トレを続け、就労ビザを取得次第、再び海を渡る。
年間指定席の見学会に訪れていたスタンドのファンからは「頑張れ!」「最後は帰ってこいよ!」の声が飛んだ。藤浪は「いずれ投げさせてもらう機会をいただけるなら投げたい」と約束。メジャーでの成功を夢見て、大好きな甲子園に別れを告げた。