西凌矢が語る兄阪神・西純矢への思い 高校の学費や野球道具そろえてくれた「優しいお兄ちゃん」
阪神・西純矢投手(21)に、この春から法大野球部に所属する弟・凌矢外野手(18)からエールが届いた。右腕は、兄弟で何度も訪れたマツダスタジアムで行われる開幕2カード目の4月6日・広島戦に先発する見込み。幼少期からの思い出や、兄から受けている心強いサポートについて明かす。西純も、プロ入りを目指す弟へ激励の言葉を送った。
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純矢がからりと笑う。「凌矢は真面目でおとなしい」。性格は正反対と言われることも多い。一方で「しゃべり方は似てると言われます」と凌矢さん。そう言ってはにかむ笑顔は、純矢そっくりだ。
幼少期から変わらず「優しいお兄ちゃん」。小、中学時代は、学校から帰ると日が暮れるまでキャッチボール。自宅から近いマツダスタジアムには何度も足を運び、前田健太らカープのスターに憧れた。あの舞台に今、兄の姿がある。
「1年1年、変わっていってるので、すごい。でも、頑張って追い付かないといけないなという気持ちもありますね」
プロ入り当時から10キロ近く増量し、会う度にたくましくなる純矢。6日・日本代表戦では4回無失点の快投で日本球界屈指の強打者たちを圧倒した。試合後はすぐにスマホを手に取り、「お疲れさま。ナイスピッチング」と連絡。「一選手として見ても、すごいなと」と尊敬の念を抱く。
中学まで投手を務めたこともあり、「比べられるのが嫌だなという気持ちはあった」と周囲の声に心が乱される時期もあった。それでも、「今はないですね」ときっぱり。この春に進学する法大からプロ入りを目指す。
純矢からは「人一倍、頑張れ」と激励をもらったという。模索の日々も過ごしたであろう兄からは「普段は別って感じで」と悩む姿を見たことがなかった。「人にやらされる練習じゃなくて、自分から進んでやっている練習が多い。プロ野球選手は誰よりも練習するんだなと感じてます」。道しるべは、ずっと見てきた純矢の姿だ。
心強いサポートも夢を後押しする。凌矢さんは新しい外野手用のグラブを手にした。純矢が入学祝いに買ってくれたものだ。
純矢が高校1年、凌矢さんが中学1年の秋、父・雅和さんが脳幹出血により45歳の若さで他界。涙に暮れたあの日から、純矢は兄であり、父でもある。仮契約で宣言した通り凌矢さんの高校の学費をまかない、必要な野球道具は全てそろえてくれた。「お兄ちゃんがしっかりしてくれて、頼りがいがあります」と感謝は尽きない。
純矢が思いを明かす。「かわいい弟です。お父さん代わりじゃないですけど、なに不自由なくやらしてあげたい。自分が親に野球道具とかを我慢したことがなかったので」。全力で夢を応援しつつ、少し意外な言葉で兄らしいエールを送った。
「プロになるのが全てじゃないと思う。とにかく一生懸命頑張って、後悔ないように」
グラウンドを離れれば、ごく普通の兄弟だ。「一緒にゲームやることが多いです、プロスピとか。強いのはやっぱりお兄ちゃん(笑)」と凌矢さん。初の開幕ローテ入りを果たそうとしている兄に思いを届ける。「目標の2桁勝利も、順調にやってくれればいけると思います。ケガが心配なので、体に気を付けてやってほしいです」。切磋琢磨(せっさたくま)して夢を追いかけてきた。2人の新たな春が、また始まる。
◆西 凌矢(にし・りょうや) 2004年5月31日生まれ、18歳。広島県広島市出身。右投げ右打ち。外野手。180センチ、83キロ。阿品台中時代に所属した広島ボーイズではジャイアンツカップや春夏の全国大会に出場。広陵高では3年春に甲子園出場。高校通算15本塁打。50メートル走6秒4、遠投120メートル。