阪神・近本が自ら解説「理想の一打」と「気付く力」 絶好調リードオフマンの“打撃理論”
阪神の近本光司外野手(28)がデイリースポーツ読者に向けて、さまざまなテーマをもとに本心を明かす企画「謳歌」。出色のシーズンを送っている不動の1番打者が、「理想の一打」そして大切にしている「気付く力」を熱く語った。
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バッティングの楽しさというのは、自分の理想と違った結果が出た時にこそ感じられます。なぜこのボールがその方向に飛んでいったのか、それを考えることで新しい発見があるんです。そうすることでまた、自分の理想、選択肢が増えていくことになります。ただ、理想と違った結果が出ることはとても少なくなってきました。
逆に今年は「理想のど真ん中」と言えるバッティングがありました。5月13日・DeNA戦(甲子園)の八回1死二塁で、入江(大生)投手から打ったセンターオーバーの二塁打です。外角の真っすぐに対して「この打球を打ちにいこう」と「目付け」をして、理想のそのままに打球が飛んでいったので、楽しいというより面白かったです。
この打席で気付いたことが一つありました。ボールは無回転よりもスピンがかかった方が飛距離が出るというデータが取れました。自分の理想は芯にバチンと当てて飛ばすことだったのですが、少し前でボールにスピンをかけて、いいポイントで打った方が飛距離が出るんだなというのはすごく感じました。
でも、理想的過ぎて、これに固執し過ぎると危ないと感じました。気持ち良かった反面、怖かったんです。これを追い求め過ぎたり、自分はもう大丈夫だと思ってしまうと、そこでもう終わりですよね。そこで感じ取ることも少なくなってきてしまうので。
今年は「気付く力」を大切にしています。1月のオフシーズンにふと思ったんです。何かを変えて劇的に良くなるということは、たぶんもう、そんなにないだろうなと。例えば3割5分を打つために何か技術を身につけたり練習量を増やしても、それほど伸び代はないのかな。でも、何かに気付くことができれば、それが伸び代になる。その作業を増やせれば、どんどん自分のレベルが上がっていくと考えました。
技術面で「目付け」のポイントを前にしたことより、打つポイントが前になるからボールに力が伝わりやすくなるということに気付けた方が大きいと思うんです。「気付く力」は本当に大事です。自分が結果を残しているから「自分が正解」と思ってしまうと、「気付く力」がなくなってしまいます。そうなると進歩が止まってしまいます。
ここからは交流戦です。昨年は打率・361の成績を残せたのですが、アウトプット(実践)の部分でハマって、純粋に調子が良かったんです。どういうことかと言うと、バッティングで右足(前足)を着く時に、右足の母趾球くらいから着いて、かかとが着くまでの間でタイミングを全部合わせるという感覚です。この間でタイミングというか、時間をコントロールするんです。ストレートを狙っていてスライダーやフォークが来た時の時間差を、足の着き方でコントロールしてあげれば対応する時間が作れるなと。そうすればストレートもスライダーもあまり意識しないでいいんだと分かったんです。ほんの一瞬ですが、その一瞬が全く違う。これは以前に取り組んでいたことが、4年後に点と点がつながるように気付けたのですが、それがつながった時は最高に楽しかったです。楽しいというか、うれしかったですね。
交流戦では伊藤大海(日本ハム)投手との対戦を楽しみにしています。まだ一度も対戦がないのですが、彼の真っすぐとスライダーがどれくらいすごいのか。スライダーはどんな曲がり方をするのか、どのタイミングで曲がるんだろう、たぶん巨人の菅野(智之)さんに似ているのかな、などと想像を巡らせています。この先も楽しみは尽きません。