阪神・前川を支えた爆音の洋楽 夜のウエートルームで「気を紛らわせていました」
「楽天3-11阪神」(7日、楽天モバイルパーク)
「3番・DH」に抜てきされた阪神・前川右京外野手(20)がプロ初のマルチ安打で起用に応えた。高卒1年目の昨季は上半身のコンディショニング不良のため、夏場までリハビリ生活。プロ入り早々に味わった苦難の日々をどう乗り越えたのか。未来の大砲候補が過ごした苦悩の日々を担当記者が明かした。
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夜の鳴尾浜に前川の“悲痛な叫び”がこだましていた。人けのないウエートルームを重低音が揺らす。スピーカーから出る大音量で、やり場のない鬱憤(うっぷん)をなんとか抑え込んだ。
高卒1年目の昨季。オープン戦で3安打を放ち、大器の片りんを見せるも3月下旬に上半身のコンディショニング不良を発症。夏場までリハビリ生活を強いられ、日課だった素振りすらもできなかった。
たまったストレスを発散した場所は夜のウエートルーム。爆音でお気に入りの洋楽をかけ、できる範囲の下半身トレーニングで汗を流した。「どうにか気を紛らわせていました」。ポップなミュージックに心が震わされてしまう。「本当にやばかったですね」。メンタルは衰弱しきっていた。
岡田監督に開幕右翼候補に挙げられながらも、左上肢のコンディショニング不良を発症して今春キャンプは2軍スタート。再び故障の壁にぶち当たるも、また乗り越えた。
心が折れそうになるたびに、アップテンポの曲に身を包んだ日々。プロ野球人生の始まりから味わった苦難が、前川を強くした。(デイリースポーツ阪神担当・北村孝紀)