阪神・大竹 近本離脱の危機にプロ初完封 理想のベテラン左腕の教えで“意識改革”→7勝で球宴選出

 「広島0-2阪神」(5日、マツダスタジアム)

 圧巻の105球で、チームの窮地を救った。阪神・大竹耕太郎投手(28)が5安打7奪三振無四球でプロ初完封を成し遂げた。近本が右肋骨(ろっこつ)骨折で出場選手登録を抹消された前夜は大敗。落とせなかった一戦で最高の投球をみせた。2位・DeNAが敗れ、ゲーム差は2・5に広がった。この日、「マイナビオールスター2023」に監督選抜選手として初選出された左腕。初完封に球宴初出場と、忘れられない一日になった。

 プロ野球人生における新たな世界が開かんとしていた。九回2死。大竹は自身に言い聞かせるように、つぶやいた。「ただの一打者だ。これで終わるわけじゃない」-。坂本のサインにはっきりとうなずき、投じた105球目。内角低め直球で4番・西川を三直に仕留めると、左拳をぐっと握りしめた。プロ通算47試合目にして無四球で初の完封勝利だ。

 「さすがに九回を行く時はちょっと(完封を)考えましたけど、一人一人を抑えていって、その積み重ね」

 丁寧に打者と向き合った。ヤマ場は2-0の七回だ。1死から西川に右翼線へこの日3安打目を浴びる。犠打を試みた続く田中の三塁寄りへの打球を自ら処理したが、二塁・中野の一塁ベースカバーが遅れてセーフに。1死一、二塁とピンチを背負った。

 苦い記憶もよぎる。「ああいうところで足をすくわれる経験を腐るほどしてきた」。それでも「僕がカバーしてあげたいなと思える野手。自信を持って投げました」。続くデビッドソンを遊飛に仕留めると、会沢は内角140キロ直球で空振り三振に。いつも助けてくれる仲間のミスを救い、雄たけびを上げた。

 苦しい局面を乗り越え、移籍後最長となる9回5安打無失点で今季7勝目。5月27日・巨人戦以来、約1カ月半ぶりとなる久々の白星をつかんだ。規定投球回にも再到達し、防御率1・13でリーグトップに再浮上。岡田監督も「そら向こうも対策練ってると思うけど、あんだけコントロール良くな、コースコース、低め低めに投げられたら連打浴びひんからな」とうなずいた。

 昨オフ、理想の投手とするヤクルト・石川と食事する機会に恵まれた。ベテランの知識や経験に触れ、「自分は自己満足の練習だった」と痛感。意識改革が始まった。春季キャンプでは石川に言われた「投手は傾斜を使って投げる仕事」という意識のもと、ブルペンに入る頻度を増やした。クイックを入れ、場面やカウントなど常に試合を想定。「どうやって1軍で抑えるのか、その目的に合わせて」練習から取り組んだ。

 成果は新天地で如実に表れている。「これからチームの柱になっていくには完投も求められる。こういう経験ができたのは大きかった」。初の球宴出場も決定した左腕が、虎の主力へと成長していく。

 ◆阪神投手今季4人目の完封星 完封勝利を飾った阪神先発投手は、今回の大竹が才木、村上、伊藤将に続いて4人目で両リーグ最多人数となった。阪神4投手は各1完封勝利で、先発投手による4完封は広島(九里=2、床田&遠藤=1)と並び両リーグ最多タイ。

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