阪神・近本 現実となった「黄金期に入ります」 2年前の春季キャンプで発言した真意とは
「阪神タイガース4-3読売ジャイアンツ」(14日、甲子園球場)
ついに「黄金期」に入った。阪神の近本光司外野手(28)がデイリースポーツ読者に向けて、さまざまなテーマをもとに本心を明かす企画「謳歌」。18年ぶりの“アレ”を成し遂げ、2年前の言葉を実現した。右肋骨の骨折やメンタルの波を乗り越えて駆け抜けた5年目。佐藤輝明内野手(24)や森下翔太外野手(23)ら次代の「黄金期」を担う若手への思いも語った。
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デイリースポーツの読者の皆さん、阪神タイガースの近本光司です。プロになって初めての優勝は「あ~良かった、良かった」。そんな感じでした。
2021年3月1日。春季キャンプ最終日の締めで「チームは今年から黄金期に入ります」と宣言しました。2年前の言葉を、ようやく現実にすることができました。当時は(佐藤)輝や中野が入ってきて、彼らが2、3年ほど経験を積めば優勝に近づけるだろう、どこかで優勝できるだろうと思っていました。それが今年だったんだということです。
でも「黄金期」がずっと続くかと言えば、そうではありません。当然、世代は移り変わっていきますし、FAなどで退団する選手もいるかもしれません。輝や森下が僕らの年齢になった時に、どれだけチームを引っ張っていけるか、例えば僕や(大山)悠輔がいなくてもやっていける。そうやって引き継がれていってこその「黄金期」だと考えています。
今季で印象的だったのは、サヨナラ勝ちが多いなということでした。僕のは(4月1日・DeNA戦)もう覚えていないですが(木浪)聖也、小幡、森下、悠輔、輝。「勝たなければいけない」と思わなくても「誰かが絶対やってくれる」と感じていました。その場面、状況になったら、それぞれの人が打つ、抑えるという仕事をしっかりできていた。今年は強いなと感じることがよくありました。
個人の話をすると、5年目の今季はケガをしないことを意識してやってきましたが、7月には肋骨の骨折がありました。離脱することに葛藤はありましたが、不可抗力だったので骨折をネガティブに考えたことは一度もありませんでした。「離脱」ではなく「休養」と捉え「どうやってプラスに変えるか」しか考えていませんでした。やりたいと思っていたことができて、後半戦は数字にも出ました。あの期間があったから今がある。そう言えると思います。
最近、気付いたことがありました。自分を肯定する言葉を使うようになったら調子が落ちている、スランプに入っているということです。状態はいいのに結果が出ないと、メンタルを保とうとして「打球はいい」「飛んだのが野手の正面だった」「打てるボールがなかった」などと自分を肯定したくなります。そういった言葉を並べても、今ある課題を見ようとせず、目を背けているだけなんです。今年は少し「自分を肯定しているな」と感じる時期がありました。
例えば6月あたりはそうでした。21打席連続無安打など数字が落ち込んだ時期でした。ストライク、ボールについて審判との見解の相違もありました。試合は続くので、何とか自分のメンタルを保ってあげようと、意識して肯定的な言葉を使っていました。そこから抜け出すためには、結局は「その時の俺、頑張れ」で、やることをやるしかないんです。やるべきことは練習や試合前に済ませて、現状に目を向ける。肯定的な言葉で自分を守ろうとしたところで、いい結果にはつながらないと分かりました。
それでも、メンタルの波はあまり表に出さないようにしています。一喜一憂したいし、その方が楽なのは分かっていますが、その先に自分の成長があるのかと言うと、そうではないと思っています。
やはり価値があるのはリーグ優勝だと誰かが言っていました。今後もクライマックス・シリーズや日本シリーズを目指して戦いは続きますが、シリーズへの重圧などはあまり考えず、どれだけ楽しめるかだと思います。若い選手たちが勢いに乗って、僕らがそれをサポートする感じです。若い子たちのチームでもあるので、その力を存分に使った方が勢いが出る。勝敗の責任など負わず、若い選手が楽しみながら戦った方がいいと思います。
今は輝や森下が打ってくれているからこそ強いんだと思います。それが今年のいい流れでした。彼らが打つだけで打点が入る。その状況にどうやって持っていくのか。チャンスメークするのが僕らです。もし彼らが苦しくなった時に、僕らの世代が『じゃあ、ちょっとやろうか』みたいな感じでいい。さらなる「黄金期」が、その先にあるはずです。これからも応援よろしくお願いします。(阪神タイガース外野手・近本光司)