岡田阪神 アレから18年で球団史上最速V 初の連覇へ来季も「辞めへんよ」 さぁ38年ぶり日本一へ
「阪神タイガース4-3読売ジャイアンツ」(14日、甲子園球場)
ついにアレ…いや優勝の瞬間が訪れた。阪神が4-3で巨人を下し、2005年以来、18年ぶり6度目のリーグ制覇を達成。甲子園に詰めかけた虎党の大声援にも後押しされて、今季最長となる11連勝でゴールテープを切った。第一次政権の前回優勝に続き、再び栄冠に導いた岡田彰布監督(65)。ナインの手で6度、宙に舞った後の優勝インタビューでは場内に笑いを起こす“岡田節”も披露した。
みんなで勝ち取った優勝だ。ゲームセットの瞬間、岡田監督はパン!と手をたたいた。地鳴りのような“岡田コール”の中、ベンチを出ると、高ぶる感情を必死に抑えながら、ゆっくりと歓喜の輪へ。両手を広げ、選手に身を委ねる。1度、2度…計6度。頂点に立つ幸せをかみしめて、18年ぶりに甲子園の夜空を舞った。
「甲子園でたくさんのファンの前で絶対決めようとみんなが言っていたので、うれしく思います。みんなが力をつけてチームができたということで選手のおかげだと思います」
65歳の体にむち打って指揮を執った。交流戦中は連戦に長距離移動が重なり、クタクタに。「60過ぎたらキツいわ。もう5年早かったらなあ」。体力の衰えは隠せず夜中に何度も足がつった。枕元の塗り薬は必需品。昼食は苦手な酢の物をとり、年齢にあらがった。
奮い立たせてくれたのは選手の成長だ。「完成されたチーム」を率いた前回と違い、全員が息子より年下の平成生まれ。若い芽を伸ばすため、監督業の習慣を変えた。午後0時半に自宅出発。「2005年は出たことなかった」というミーティングには毎日参加し、連係ミスなど気付いたことを選手に伝えた。
グラウンドに立つ時間も長くなった。選手の状態、表情、些細なことまで見逃さない。青柳、大竹、才木…。来る者は拒まず、助言を送る。タイミングを見計らい、監督室にも呼んだ。岩崎がセーブ失敗した翌日は解決法を授け、梅野にはスタメンから外す理由を説明した。遠征中、大山をブルペンに呼び寄せ、マンツーマン指導したことも。試合前、近本と中野が素振りする様子はそっと見守るだけ。「木浪はリーダーシップあるな」。新たな発見もあった。絶妙な距離感で、選手の性格を知り、年齢差の不安を吹き飛ばした。
課題の守備力はメキメキと上達。打席での意識改革も実を結び、四球は激増した。最近はベンチの選手から「(フルカウントでも)今までと考え方変えんなよ!」と声が飛ぶ。それは岡田監督がキャンプから伝え続けた教えだった。「びっくりしたわ、俺も」。虎はまだまだ強くなる。そう確信した瞬間だ。
V逸した08年はシーズン終盤に巨人の猛烈な追い上げに遭い朝4時まで眠れなかった。「今は速攻でテレビ見ながら寝るわ」。朝は7時に起床。新聞を読み、10時からサスペンスドラマを見て犯人を予想する。激やせと心配された4キロ減は一日2食の規則正しい生活のたまものだ。首位をひた走る中、15年前の悪夢が頭をよぎることは「なかった」。首位から陥落しても「何も思わんかった」。重圧、激務、孤独…。従来の監督像を覆し、余力たっぷりに虎党に夢をかなえた。「勇退?ないない、辞めへんよ」。球団初の連覇へ覚悟はもう決まっている。
「アレを決めたのは優勝まで。日本一は決めてない。もしいい言葉があったら教えてほしいですね(笑)」
優勝インタビューでは新たにアレに代わる日本一を意味する言葉を募集した。ファンを泣かせて、最後は岡田節で笑わせる。あの85年以来、38年ぶりとなる日本一へ。名将・岡田が虎の歴史に新たな1ページを刻む。