阪神ドラ2・門別 高卒新人初先発で堂々5回0封 岡田監督「来年の楽しみやんか」 連覇へ使者の予感
「広島東洋カープ2-1阪神タイガース」(30日、マツダスタジアム)
指揮官をうならせる力投だった。プロ初先発した阪神・門別啓人投手(19)が5回7安打無失点。ドラフト2位の高卒左腕は再三のピンチを迎えながらもゼロを並べた。球団では40年ぶりの高卒新人初先発初勝利こそ逃したが、岡田監督は「来年の楽しみやんか」と絶賛。3連敗となったチームにとって、大きな収穫となった。
高卒ルーキーらしからぬ投球で観客、周囲の度肝を抜いた。ピンチでも表情が変わらない。門別は堂々と95球を投げ抜いた。
「今回は失点だけはしたくないと投げる前から思っていたので、無失点で終われてよかったと思います」
初回から緊張はなかった。1死から菊池の3球目にはこの日最速の149キロを計測。その後のピンチは自身のスタイルで切り抜けた。四回1死一、三塁は末包をフォーク、デビッドソンを直球で2者連続空振り三振。五回2死一、二塁は2打席連続安打を許していた西川に対し、2ボールからカウントを立て直して左飛に仕留めた。
1軍初昇格、即デビューした15日の広島戦(マツダ)は、2番手で3回3失点だった。今回は持ち味の直球で押し、「ピンチじゃない時もピンチの時も真っすぐで押せていけた」。悔いを晴らした。
5回7安打無失点で、無四球。岡田監督も「思った以上によかったよなあ。コントロールがなあ」と絶賛した。優勝決定後は富田ら若手を起用したが「一番落ち着いて投げとったよな」と強心臓ぶりにも目を丸くし、「それはもう来年の楽しみやんか」と期待値もさらに高まった。
指揮官も称賛した落ち着きぶり。その考え方に秘密があった。「ピンチの時は向こうにとったらチャンス。自分だけが追い込まれたら、打者は楽だと思うので。逆にこっちが余裕を持っていたら、向こうは焦ってチャンスで打たなきゃってなる」。打者の心理も考え、平常心を保つ。きっかけはファームで試合を見ている時だった。
「結構バッター打ち急いでいるなって。チャンスの時は低めの球を振ったりする確率が上がるので」。客観的な視点から「ピンチこそ冷静に」と考えられるようになった。その点で目標とするのが同じ左腕の大竹と伊藤将。「顔に出さないので、あれが理想」と尊敬のまなざしを向ける。
直球には自信を得たが、「変化球はもっと磨いていかないといけない」と向上心も十分。「これから先はずっと1軍で投げていけるように、もっと練習したい」。19歳の初々しい笑顔が輝きを放った。
◇阪神・安藤投手コーチ(門別について)「素晴らしかった。19歳のルーキーとは思えない落ち着き。将来が楽しみです」
◇阪神・長坂(門別とバッテリー)「初登板の時から物おじせず落ち着いて投げている印象。よく粘ってくれた」