阪神・安藤コーチ 勉強になった岡田監督の決断-4・12村上7回完全時
阪神を18年ぶりのリーグ優勝へ導いた岡田監督を支えた首脳陣も、さまざまな思いを抱いてシーズンを戦った。コーチが今季を振り返る「18年ぶりの頂点 コーチに聞く」。安藤優也投手コーチ(45)は、新戦力の台頭が目立った投手陣の奮闘を振り返るとともに、指揮官から感じた投手運用の妙を明かす。
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球界に波紋を呼んだ采配を間近で目撃した。4月12日・巨人戦。東京ドームには驚きの声とともにブーイングが起こった。衝撃を残した村上の7回完全投球。安藤投手コーチは当時の心境を語る。
「迷うところだと思うんですよね。完全試合だし、でも勝ちも優先しないといけない。あの監督の決断はすごく勉強になった」
1点リードの八回1死。完全試合ペースだった村上の打席には、代打・原口が告げられた。今季初先発だったプロ未勝利右腕の信頼度はまだ低く、「すぐに代える予定だった。それが、あれよあれよと…」と安藤コーチ。それでも「悩まんかった」と勝負に徹した岡田監督の采配に、「考えさせられた試合。僕だったら変えたかな?と思うと、どうだったかなと思う」と率直な思いを明かす。
直後の八回に2番手・石井が同点ソロを被弾したことで賛否両論が巻き起こったが、その後の村上の躍進が“正解”へと昇華させた。2軍コーチ時代から指導してきた右腕のブレークには「投手に一番必要なコントロールの良さはもともと持っていた。何かプラスすれば、絶対に1軍ローテーションで回っていけるんじゃないかと思っていた」と回顧。その「何か」には直球の質を挙げ、「去年の秋キャンプでは課題をクリアしてくれていたので、期待は持っていました」と振り返る。
第1次岡田政権時には鉄壁の方程式「JFK」が活躍したブルペン陣。その運用においては、変化があった。今季は中盤からリリーフ9人体制を敷いたことが奏功。同コーチは「うまくはまりましたよね。連投した投手、球数投げた投手、状態が悪い投手を休ませながら使えた」とうなずく。指揮官は当初の方針ではなかったワンポイント起用も導入。湯浅の離脱や浜地の不調など誤算があった一方、先発候補だった桐敷が中継ぎとして台頭するなどうれしい誤算もあり、「恐らく最初は固定するつもりだったところを、監督が柔軟に、考え方を変えていったのかな」と変化を感じ取った。
「球界を代表するエースとかクローザーはいないと思うんですけど、レベルの高い選手が集まっている。臨機応変に対応できたかなと思いますし、それができたのは質も量もあったからこそ」と安藤コーチ。リーグ屈指の投手陣が18年ぶり頂点の基盤となった。