「なんば線シリーズ」は構想時からの夢 「NYのサブウェイシリーズのように」関係者が明かす秘話
阪神とオリックスが激突する日本シリーズは、両チームの本拠地が阪神電鉄の線路で結ばれていることから、「なんば線シリーズ」と呼ぶファンも多い。09年の阪神なんば線開通に携わった関係者にとっては、工事計画中から描いていた夢が実現する形だ。当時、西大阪高速鉄道でなんば線工事に携わっていた、阪神園芸代表取締役社長・久保田晃司氏(63)が積年の願いがかなった喜びを語った。
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一足先に日本シリーズ進出を決めていた阪神に続いて、オリックスがCS突破を決めると、すぐさま「なんば線シリーズ」がネットのトレンドワードに入った。直線距離で約12キロ離れた甲子園球場と京セラドームを結ぶ、阪神なんば線に由来したフレーズだ。
「どこかが宣伝をしたわけでもなく、我々の心の中にあったものが、自然発生的にそういう言葉として生まれてきたのが感動的でした。関西同士で日本シリーズができるのは久々なので、本当にうれしいですね」
感慨深げな表情を浮かべる久保田氏は、かつて西大阪高速鉄道の計画部部長として、なんば線開通に尽力した。「阪神電鉄が難波まで線路をひく特許をとったのは1959年。当時はもちろん、ドーム球場の考えすらなかったときです」と半世紀以上に及ぶ歴史をひもとく。
97年開業の大阪ドーム(当時)。元々、建設候補地には天王寺公園なども挙がっていたが、現在の場所への誘致が始まったことで、なんば線の工事計画も変更になったという。「ドームができることをある程度想定して、『線路を曲げてでも、駅を作ったらどうだ』という構想になりました」と述懐する。
「大阪ドームが甲子園球場と結ばれることになるので、『ニューヨークのサブウェイシリーズのようになればいいね』という思いは、構想当時からありました。ドーム建設が始まるだいぶ前からですね」。本拠球場が地下鉄で結ばれている米大リーグ・ヤンキースとメッツのような“夢対決”を期待する声は、大阪ドーム開業前から聞かれていたという。
「実現まで長かったですよね。双方の成績が当然良くなかったら実現しないので。阪神タイガースも苦労した時期もありましたし」となんば線を挟んだ頂上決戦に感無量。「当然、阪神タイガースに優勝してほしいと思ってますけど、一方的になるより、野球の魅力が皆さんに伝わるような試合になれば」。関西が燃え上がる戦いの火ぶたが、間もなく切って落とされる。