【とらものがたり・大竹耕太郎投手編(2)】西勇、坂本から学んだ“発想の転換”
阪神選手の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。現役ドラフトで加入し、12勝を挙げて大ブレークを果たした大竹耕太郎投手(28)の第2回は西勇、坂本から学んだ“発想の転換”にスポットを当てる。
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物事を考えるとき、最初から否定的に捉えるか、プラスの要素を探すかで人の行動は大きく変わってくる。元々、大竹は「ネガティブなイメージが先行してしまう」タイプだと自覚していた。
開幕ローテ入りを目指す3月。西勇との会話が、発想転換の大きなきっかけとなった。伝えられたのは、前向きに物事を捉えていくことの大切さ。「西さんと発想は真逆。でもその真逆が自分には今、すごい大事だと分かった」と実感に浸る。
日常生活から、ネガティブ要素の中にポジティブな要素を探す「訓練」を意図的にしていった大竹。5月13日・DeNA戦(甲子園)でこれが奏功した。
上空から雨粒が降り注ぐ悪天候だったが、あえて大竹は「砂漠の中に生えている草」と自らを仮定し、雨中の登板を「ヨッシャー」と思うことにする。6回4安打1失点で、開幕5連勝を達成した。
「雨が最悪だと思うのか、自分は実際に雨男キャラができあがっているからこそ、じゃあもう俺の持ち場だという感覚で投げるのか。それで全然変わってくる。西さんの話が、本当勉強になった」
先発前日などは体を気遣い外食を控える傾向にあった。今季序盤も西勇に誘われた際「登板前日は行かないですね」と伝えると「2軍戦やったら行くやろ?」とすぐさま指摘され「2軍戦なら行くなあ」と考えを改め、あえてステーキや二郎系ラーメンを食べることで気持ちの余裕が生まれた。
前述の話とは少し異なるが、発想の転換、構築という意味では、バッテリーを組んだ坂本の存在も大きかった。「坂本さんは固定概念にとらわれないというかね…」。共同作業をしていく上で、理解した部分がある。
失投だったと自分が思っても、相手打者が対応できないケースがある。それをたまたまだと捉えるか、意図的に投げたら次も抑えられる可能性はあるか。一方的に坂本から言われるのではなく2人で一緒に考えながら、投球のバリエーションを増やす作業をした。
「野球の常識、ピッチングの常識を疑うってことだよね」。普通なら外角低めに変化球を投じる場面で、あえて外角高めに投げたら-というように全員の打者が同じ対応になるとは限らないからこその駆け引きに徹した。考え方一つで選択が変わる。活躍の裏側にある大きな要因だ。
◆大竹 耕太郎(おおたけ・こうたろう)1995年6月29日生まれ、28歳。熊本県出身。184センチ、87キロ。左投げ左打ち。投手。済々黌から早大を経て、17年度育成ドラフト4位でソフトバンク入団。18年7月に支配下登録。22年12月の現役ドラフトで阪神へ。23年はチームトップの12勝でリーグ優勝と日本一に貢献。