【とらものがたり・大竹耕太郎投手編(5)】偏差値70以上の進学校・済々黌に進学
阪神選手の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。現役ドラフトで加入し、12勝を挙げて大ブレークを果たした大竹耕太郎投手(28)の第5回。
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大竹は九州屈指の公立進学校・熊本県立済々黌(せいせいこう)の出身だ。偏差値は70以上で、多数の有名人を輩出している。熊本市立託麻中3年時は全国中学校軟式野球大会に出場し、地元の九州学院や熊本工など強豪校から誘いがあった。だが、なぜ公立の進学校を選んだか。理由を明かす。
「野球漬けの学校に行くということは元々、頭になくてね。強い高校からの誘いはあったけど、あんまり眼中にはなかった。姉ちゃんが熊本高校に通っていて、その姿を見ていたのも大きい」
9月まで部活中心の生活を送り、塾に入って本格的に受験勉強に取り組んだのはそれ以降だった。第1志望は県トップの熊本高。当時、大学生だった姉の沙季さんにも教わりながら、長時間机に向かい続けた。
沙季さんは振り返る。「弟は目標を決めたらやると自分の中で意識を持っていってるので、本当に意識の面から違うなと思いましたね」。学校で体調が優れない時、父の紳一郎さんに「帰ろう」と言われた時も大竹本人は「大丈夫だけん。授業を受けないと分からなくなる」とすぐ教室へ戻っていったという。
前期は熊本高を受験して不合格。家族内では公立高校だけでなく私立の進学校の進学も提案したという。ただ、大竹は「絶対受かる」と家族の前で決意し、後期で済々黌に出願。合格率の厳しい後期で合格を勝ち取った。
済々黌に入って良かったと思うことは多くあるという。学業が優れている生徒はもちろん、異なるスポーツで結果を残す生徒や、音楽の才能にあふれた生徒などがいた。高校名の由来になっている四字熟語「多士済々」(優れた人材が多くいるという意味)を実感する場が多く、「野球だけじゃなくていろんなことにたけている人がいっぱいいいて、環境が本当に良かった」。刺激を受けながら高校生活を過ごした。
「甲子園に行く」という一心で入学し、1年の秋からエースに。2年夏、3年春は甲子園に出場し、ともに1勝ずつを挙げた。「多士済々」な済々黌の仲間たちと、聖地の舞台に立てたことを大竹は誇りに思っている。