【とらものがたり・村上頌樹投手編(2)】「上から投げろ。肘を下げるな」 原点は亡き“鬼監督” 2人で作り上げた投球フォーム

 阪神・村上
 小学生時代の村上(本人提供)
 2020年に南あわじ市を表敬訪問した村上(中央)と久米守さん(右)=同市提供
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 18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献した阪神選手の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。大竹耕太郎投手に続く2人目は、プロ未勝利から今季のMVPに輝くまでの大ブレークを果たした村上頌樹投手(25)が登場する。第2回は村上の原点ともいえる少年野球クラブ時代の監督・久米守さんとの出会いを掘り下げる。

  ◇  ◇

 怒られた記憶しかない“鬼監督”。今日の村上を作り上げたとも言える人物がいる。野球を始めた賀集少年野球クラブの監督で、昨年他界した久米守さんだ。生前、デイリースポーツの取材で、プロの道へ進んだ教え子のことを誇らしそうに語っていた。

 「頌樹は手を抜かないですね。根っからの野球好きですわ」

 4年生から本格的に投手を任せた。「理由は、あの子の真面目さ。それと頭がいいです。完全なエースやった」と久米さん。「指示しなくても自分が思ったことを黙々とやる子で、吸収するのが早い。それと、ごっつい負けず嫌いで一生懸命する」。チーム内では抜きんでた存在だった。

 印象に残る一戦があった。村上が4年時に第1回が開催された「阿久悠杯瀬戸内少年野球選手権大会」の決勝戦。「6年生のピッチャーの顔を見たら青くなってもうてて(笑)。だから頌樹を呼んで、『1人ランナー出したら行け』って言って」。年上の投手が最終回の先頭打者に四球を与えると、村上は迷いなくマウンドへ。「芯が強い、本当に。3人でピッピと終わらせて、涼しい顔して戻ってくるさかいな」。村上の好救援で、同大会の初代優勝を飾った。

 村上にとって、久米さんは原点だ。「基礎は小学校でできた」と右腕。月曜以外は毎日、放課後に練習へ。冬場はアップ代わりに3キロを走った。「ただ『負けたくない』だけでした。打たれたら悔しくて泣いてましたね。監督は怖かったです。卒業してから段々、丸くなった」と笑う。

 特に投球フォームは、久米さんと作り上げた努力のたまものだ。「投げ方の基本はずっと変わらない」と言い切る。「とにかく『上から投げろ。肘を下げるな』と言われてました」。小柄な体を最大限に使い、強打者を封じる武器となった。

 プロ入り後2年は2軍暮らしが続いた村上。今季の飛躍を見ることなく亡くなった恩師は、こう願っていた。

 「一球一球ね、次の球のために『この球は』って、考え持ってやってほしい。剛球じゃないからね。球のキレで勝負する子やから」

 今季の勇姿は、きっと空の上から見守ってくれていたはずだ。「『教え子がプロ入った』って一番喜んでくれてた。『活躍できたよー』って報告したい。喜んでくれてるでしょう(笑)」と村上。マウンドに上がるたび、天国からはゲキが飛んでいたかもしれない。頌樹、上から投げろ-と。

 ◆村上 頌樹(むらかみ・しょうき)1998年6月25日生まれ、25歳。兵庫県南あわじ市出身。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。投手。智弁学園3年のセンバツで優勝し、東洋大を経て20年度ドラフト5位で阪神入団。21年に2軍で最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠。22年も最優秀防御率、最高勝率の2冠。21年5月30日・西武戦で1軍初登板初先発。今季は最優秀防御率のタイトルを獲得するなど大ブレークしてリーグ優勝&日本一に貢献。セ・リーグMVPと新人王をダブル受賞した。

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