【とらものがたり・木浪聖也内野手編(2)】野球の基礎築かれた父の英才教育

 18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献した虎戦士の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。大竹、村上に続く3人目は、木浪聖也内野手(29)が登場する。プロ5年目の今季は「恐怖の8番」として花を咲かせた。第2回は幼少期から木浪を支え続けた父・弘二さんの存在にスポットを当てる。

  ◇  ◇

 父・弘二さんの英才教育によって、木浪の野球の基礎は築かれた。野球を始めたのは小学1年の頃。弘二さんが草野球チームの監督をしていたこともあり、幼少期から野球は身近な存在だった。

 センスに磨きをかけたのが、弘二さんと二人三脚で歩んだ日々。弘二さんの仕事が休みの平日には、近くの小学校の校庭でティー打撃をするのが日課だった。ただ、弘二さんは「対応力ができればという意味で工夫してやっていましたね」と平凡な練習に独自の“スパイス”を加えた。

 体の正面側から投げるのが通常のティー打撃だが、背中側、捕手側からなどトスを上げる位置を工夫。時にはワンバウンドさせたボールを打たせるなどして難易度を上げた。

 「その時はいいなりでやっていたけど、今思えばなんかそんなこともやっていたな、というのを思いますね」と木浪。今季の試合前練習のティー打撃では捕手側から投げるトスを打つなど、幼少期にやっていた練習を今も継続している。

 プロ1年目から4年目まで、成績は下降の一途。ただ、実家に帰省した際に暗い表情を見せたことはなかったという。「最初が出来すぎですからね。1軍に上がれない選手もいる中でぜいたくな悩みですよね」と笑い飛ばした弘二さん。青森山田高、亜大、ホンダと輝かしい道を歩む中で、必死にもがきながら力を付けてきた。「彼もそんなに大学とかでエリートなわけじゃないから。だから気持ちも折れなかったと思いますね」と息子の復活を信じていた。

 甲子園で行われた5月3日・中日戦では、両親が観戦する前でプロ初のサヨナラ打をマーク。前日2日は母・忍さんの誕生日であり、プレゼントに快音を届けた。「1年目の時は何もわからない中での活躍だったけど、今年はちゃんと考えられた中での活躍。内容的には違うと思います」と期待した弘二さん。木浪のさらなる飛躍を予感させた。

 ◆木浪 聖也(きなみ・せいや)1994年6月15日生まれ、29歳。青森県出身。179センチ、81キロ。青森山田、亜大、ホンダを経て18年度ドラフト3位で阪神入団。23年は遊撃のレギュラーを勝ち取りリーグ優勝と日本一に貢献。ベストナインとゴールデングラブ賞に選出された。

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