阪神…これが岡田の考え 「野球は0対2からプレーボールがかかると思え」~正田耕三氏が学んだもの
球団史上初のリーグ連覇に挑む阪神に必要なものは何か。前回優勝時(2005年)に打撃コーチを務めていた正田耕三氏(62)が当時を振り返り、過去の経験をもとに備えるべき条件を提示した。また“岡田の考え”を例に指導者としての心構えにも触れた。
連覇のカギを握るポイントに正田氏は「戦力アップ」と「重圧の克服」の2点を挙げる。2005年に優勝し、翌年は2位。この順位の差には、はっきりとした理由があったからだ。
「あの当時はメンバーがそのままで、疲れの出た主力選手を休ませようにも代わりがいなかった。次の手に苦しんだ」
両年の開幕メンバーは打順以外、まったく同じでシーツ、金本、今岡のクリーンアップに赤星、桧山、鳥谷、矢野らが絡むチーム構成。充実期を思わせる一方、厚みに欠ける戦力を痛感したのも確かだった。
今季も自慢の投手力を材料に周りの期待が大きい阪神だが、自身の経験上、「連覇は決して簡単ではなく楽観は禁物」という。
「今年も村上、大竹、森下と同じようなプラスアルファの選手が欲しい。その3人にしても実績は1年だけ。村上と大竹はいいスタートを切れるか気になるし、安易な星勘定はできないでしょう。森下は完全マークで丸裸にされるだろうから(首脳陣の)計算に入ってないかもしれない」
かつて打撃コーチとして岡田政権に加わった正田氏だけに『岡田の考え』は十分理解している。予測と準備は“究極のマイナス思考”に拠るものだとも解釈している。
「野球は0対2からプレーボールがかかると思え」
これはコーチ時代に岡田監督から擦り込まれた考え方だ。負けている展開で試合に臨み、追いついて勝ち越す。9イニングをどう戦うか。ベンチで考えることは多い。
「選手は信用して使うが、信頼してはあかん」
これも岡田流心得のひとつだという。
選手の力を信じて起用する。しかし、選手の力に依存してはならない。だからこそ見極める目が大切になる。現状で、「信頼に応えられる選手は近本、中野、大山の3人ぐらいだろうか」。
ならば、なおさら“新戦力”の台頭は必要だ。
「それが前川なのか。井上やほかの若い選手なのか。(投手は)湯浅に期待しているようだが、なかなか上がってこないね。高橋がどこかの時点で戦力になれば」
門別という大きな芽が伸びてきたが、ライバル球団も現状維持では向かってこないはず。
「各チームが戦力アップしているし、研究もしてくる。そんな中で選手がつまずいたときに“こんなはずじゃない”と焦って悪循環につながるのが心配。しかし、そういう追い詰められた状態でどう力を示せるか。そこにも注目したい」
正田氏は最後に「勝負は9月」と付け加え、「一年間、腰を据えて戦うこと」を望んだ。(デイリースポーツ・宮田匡二)