「ヤクルト６－７阪神」（５日、神宮球場）

　無類の勝負強さは千両役者の証しでもある。阪神・森下翔太外野手（２３）が九回に起死回生の同点適時打を放った。１死満塁で中野が押し出し四球を選び、１点差に迫った場面で打席に入った。左翼席から三塁側を埋めた虎党の声援は一段と激しさを増した。

　ボールが２球続き、間を取ろうとマウンドの大西のもとに投手コーチや内野陣が集まる。プレー再開後の初球だった。

　「カウントも良かったので、いこうと思っていきました」

　甘く入った直球を痛烈に左前へはじき返し、同点の走者を迎え入れた。

　打ち損じの許されない場面。カウント２－０からの強振にも、迷いは「全くなかった」と言い切った。「変化球は見えていたので、真っすぐ系をどんどんいこうと思っていた」。常人離れした強心臓ぶりで、虎を敗戦の淵からすくい上げた。

　今季４本目の安打は右投手から初だった。打率・１５４ながら、２本の本塁打など印象的な一打が光る。「自分の持ち味は、ああいうところで１本出せたりするところだと思う。そこにはしっかりこだわってやりたい」と分厚い胸を張った。

　今季初めてカード初戦で勝利した。「すごく大きいと思う。あと２戦あるので、だいぶアドバンテージを持ちながらプレーできると思う」。チーム全体を見渡すような発言は主軸の自覚でもある。虎の３番は２年目を迎えたばかりだが、日に日に頼もしさを増している。