今季初勝利の阪神・村上 あえて原点回帰させた恩師の言葉とは「1時間近く怒りました」
「阪神1-0広島」(9日、甲子園球場)
先発して7回無失点の快投で今季初勝利を手にした阪神の村上頌樹投手(25)には、センバツ優勝投手となった智弁学園高時代に覚醒へとつながった〝ある事件〟があった。
◇ ◇
智弁学園でセンバツ優勝投手となって全国制覇した村上が、昨年はプロとして初めて日本一を勝ち取った。高校時代の覚醒につながった“ある事件”のことは、村上も、智弁学園・小坂将商監督の脳裏にも焼き付いている。昨オフ、村上はその出来事に起因する金言を小坂監督から授かっていた。
今年1月、阪神での飛躍後初めて、村上は小坂監督と再会した。「ちょっとあか抜けたというか。練習は真面目にするので、それに自分の体がうまくついてきたんじゃないですかね。食事とかそういう部分も」。小坂監督は教え子の成長を分析する。
MVPに輝いた右腕に向けた忠告はただ一つ。「調子に乗るなよ」-。村上の人間性には信頼を寄せている。「ブレークしていろんな取材を受けるじゃないですか。そんな中でも『調子に乗るなよ』と。ちゃんとする人間なんで心配はしてないですけど、高校のときに1回怒ったので」。高2の秋、小坂監督は3年間で唯一のカミナリを村上に落とした。
秋季近畿大会準々決勝の大阪桐蔭戦で完投しながらも敗戦。試合後に村上が見せた態度が小坂監督は許せなかった。「追加取材の依頼があって『受けえ』と言ったら、『はぁ、はい』みたいな感じだったので、『何を偉そうに言うてるんや』と。自分一人でやってるんとは違うということを、1時間近く怒りました」。この叱責(しっせき)が後のセンバツ優勝につながったと小坂監督は指摘する。
「練習態度も変わりましたし、年が明けて春センバツで優勝して。全てが変わったんじゃないかと思いますね」。プロで注目の存在となったことで、高校時代の過ちをたどって原点回帰させるようにあえて“慢心厳禁”を言い渡した。「てんぐになったらアカンということは、分かってると思いますけどね」と親心をのぞかせた。
大躍進のきっかけになった昨年4月12日の巨人戦。7回完全投球の中で、智弁学園の2学年先輩の岡本和を空振り三振に切った。今季も伝統の一戦で繰り広げられる同門対決に、「勝負事ですけど、どっちも応援します」と心を躍らせる小坂監督。プロ4年目で初めて開幕ローテに入った村上を「安定して2桁勝てるように頑張ってくれたら。岡本の30本、100打点と同じような高い目標を持って」と期待のまなざしで見守り続ける。(デイリースポーツ・丸尾匠)