執念ドロー岡田阪神 開幕オーダーで確かな上昇の手応え 糸原粘って四球→近本2点適時内野安打 小幡「藤本さん信じて走った」
「中日2-2阪神」(12日、バンテリンドーム)
重い空気を断ち切った、執念のドロー劇だ。阪神は2点を追った八回2死二、三塁から、近本光司外野手(29)が二塁へ同点の2点適時内野安打を放った。粘りの四球に加え、積極的な走塁も絡めた“らしい”攻撃で、2戦連続での完封負けを阻止。延長十二回の激闘の中に見えた光をきっかけに、きょうこそ勝利をつかむ。
勝てはしなかったが、執念は見せた。今季2度目となる2試合連続完封負けの悪夢が現実味を帯びてきた八回だった。長く眠っていた虎打線がようやく目覚めた。
2点差とされた直後の攻撃だった。1死から代打・糸原が勝野に対して驚異の粘りを見せた。フルカウントから5球ファウルの後、12球目に四球を選んだ。平田ヘッドが「糸原だよ。(糸原)健斗があそこでフォアボールを粘って粘ってさ」と賛辞を惜しまなかった打席が試合を動かした。
続く木浪が左前打でつないで1死一、二塁とすると、代打・ノイジーが左中間へ大飛球を放つ。左飛に倒れたが走者2人がタッチアップで2死二、三塁と好機を拡大。打席に近本を迎え、虎党の期待は最高潮に達した。
近本は3球で追い込まれたが、2球続けてファウルで粘った。「真っすぐかフォークかというところで、ストレートにしっかり入っていって変化球にどう対応するかだった。変化球だったらあそこに飛ぶだろうと思っていた」。迎えた6球目。外角のスライダーを一、二塁間へはじき返した。
二塁・田中の送球がそれて一塁側ベンチに転がる間に三走・糸原に続き、木浪の代走・小幡も一気に本塁を陥れた。殊勲の小幡は「スピードを緩めることなく走ることができた。藤本さんを信じて走りました」と好走塁を振り返り、好判断で後押しした藤本内野守備走塁コーチは「ああいう形だったら回す。小幡がちゅうちょなくいってくれた」とたたえた。
チームにとって20イニングぶりとなる得点を刻み、同点適時打の近本も「小幡がしっかりかえってくれて同点になったというのが良かった」と、頭上で何度も手をたたき、喜びを爆発させた。
岡田監督は開幕戦と同じオーダーで首位中日との初対戦に挑んだが、今季初の引き分けに終わった。延長十二回を戦い抜き、ベンチ入り野手では第3捕手の長坂以外を使い切る総力戦を演じた。バンテリンドームでのシーズン初戦で勝利すれば18年以来6年ぶりだったが、最後に決め手を欠いた。打線は低調な状態が続く。それでも尾張の地で見せた粘りは、確かな上昇の手応えも感じられた。