「抑えて当たり前」の投手に打たれてしまう投手心理とは?2戦連続で投手に適時打を浴びた阪神・西勇 評論家が解説
「阪神1-4楽天」(6日、甲子園球場)
阪神先発・西勇は6回4失点で3敗目を喫した。三回に自らの適時打で1点を返した直後の四回、自らの適時失策で1点を与えると、投手の藤井に“お返し”の右前適時打を打たれた。西勇は前回登板の5月30日・日本ハム戦(甲子園)でも投手の山崎に先制タイムリーを浴びて敗戦投手になっている。“抑えて当たり前”の投手に打たれてしまう投手心理を、デイリースポーツ評論家の中田良弘氏が解説した。
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初回に2失点していた西勇は三回に自らのタイムリーで1点をかえし、流れは阪神に傾きかけたかに見えた。しかし、四回に手痛いミスを犯す。2死二塁からボテボテの投ゴロを取り損ね、さらに一塁に悪送球するダブルエラーで追加点を与えてしまった。
続く太田を申告敬遠で歩かせ一、二塁。打席には9番の投手・藤井を迎えた。ところが、外角への制球が定まらず、いきなり3ボールに。なんとかストライクを2つ取ってフルカウントまで戻したが、6球目の低めに投じた144キロの直球を一、二塁間に運ばれ、この回2点目を失った。
前回登板の日本ハム戦でも山崎に先制タイムリーを打たれて負け投手になっている。またしても要所で投手に打たれ、この失点は、ただでさえ得点力不足が深刻なチームに重くのしかかった。
中田氏は「もったいない失点だった。直前の失策で動揺もあったのかもしれない」と前置きした上で「ただ、投手に投げる難しさというのは確かにある」と元投手だった立場から西勇の気持ちをおもんぱかった。「やっぱり抑えて当たり前みたいなところがあるし、投手に打たれるのは恥みたいところもあるでしょ。相手が打者なら思い切って勝負するだけで余計なことは考えないけど、ピンチで投手を迎えると、いろいろ考えて邪念が入ってしまう」と語る。
投手に関する打撃データが少ないことも影響しているという。「打者なら個々の傾向や対策はデータとして出るが、投手は少ない。ましてやパ・リーグの投手の場合は皆無といってもいい。どんな打撃、スイングをするのかさえも分からないから、逆に打者にはない投げづらさがある」と指摘する。結果、経験豊富な西勇でさえも、普段は打撃練習もしていない投手に痛打を浴び、リードを広げられてしまった。
「投手に打たれて、ベンチに戻ると、『何やってんだよ』みたいな冷たい空気も感じるしね。打者のつもりで投げろ、みたいなことをよく言うけど、そんなに口で言うほど簡単なものじゃないんだから」と複雑な投手心理を解説。「投手に打たれると、打たれた本人はもちろんだけど、チームにとっても大きなダメージになる」。ビハインドが3点に広がった阪神打線は四回以降、ほぼ無抵抗のまま敗戦。今季初の同一カード3連敗を喫して貯金も消滅した。