「阪神６－５ＤｅＮＡ」（７日、甲子園球場）

　希望の光を携えた若虎が逆転サヨナラ勝利を運んできた。阪神・野口恭佑外野手（２３）が五回に代打でプロ初安打を放って反撃の口火を切ると、六回にはプロ初打点となる中犠飛。育成入団から昨秋に支配下契約を勝ち取った苦労人が４点ビハインドをはね返し、今季４度目のサヨナラ勝ちを導いた。チームは３位に浮上して、首位・広島に１ゲーム差に迫った。

　七夕の夜、期待の新星が輝いた。白球が右翼の芝生で跳ねる。野口は度会が後逸したのを確認すると一気に三塁へ。そしてベース上で両手を小さく万歳した。

　「めちゃめちゃうれしかったです」

　待望の一打だった。４点を追う五回無死一塁で代打で登場し、１５３キロ直球を右前へ運んだ。相手守備が乱れる間に一走・小幡が生還。「やっと壁を抜けられた」。プロ初安打で反撃の１点を生み出した。六回１死満塁では京山の直球を飛距離十分の中犠飛に。１点差に迫る大きな１点で今度はプロ初打点を記録した。

　昨秋キャンプ中に支配下登録を勝ち取り、春季キャンプは１軍スタートと順調だった。しかし、オープン戦では結果を残せず開幕２軍に。これまでしなかったような空振りをすることもあり、恐怖心を覚えて持ち味の積極性を失った。２軍でホームランもなかなか出ず、「打ち方分からなくなりました」と嘆き、「取材されなくなって、寂しかったですよ（笑）」と漏らすこともあった。

　開幕前に１軍を経験し、見つけた一番の課題はメンタル面だった。「１軍だとアップアップしちゃって」。球団のメンタルトレーナーの助言もあり、振り返りノートをつけることを日課に。書き入れるのは、今日良かったこと、明日良くしたいこと、今日の気持ちなど。自分と向き合い、整理。緊張しやすい性格を克服すべく、意識したのは「目の前のことに集中すること」だった。

　前日からケイの動画を見て研究していた。打席では目の前の球にだけ集中し、結果につなげた。二ゴロで一走に残った八回に代走を送られた。実は六回、中犠飛の後から両足のふくらはぎ、太ももの裏がつり始めていた。「自分から言ったほうがいいかな」と自己申告。「すごい一日だった」と笑っていたが、初回無死一、三塁で無得点に終わり、二回攻撃前に円陣を組む必死さを見せたチームを、劇的逆転サヨナラ勝ちに導いた。

　願いは天に届いた。前夜、就寝前にルーズリーフの“即席短冊”に「明日初ヒットが打てますように」としたためた。ただ、「１２時過ぎて書いてしまったので（笑）」と“野口節”で痛恨のミスを告白。「でも、かなってよかったです」とはにかんだ。「バッティングでできれば貢献したいので、体力付けてこれからチームの戦力として戦っていけたら」。勝利という虎党の願いもかなえた若虎が、ここからチームの重要なピースとなっていく。

　◆今季４度目サヨナラ勝利！　阪神がセ・リーグ最多タイとなる今季４度目のサヨナラ勝利。最大４点差からの逆転勝ちは今季初となった。なお、セ・リーグは１位・広島から４位・ＤｅＮＡまで１ゲーム差。５位・中日も首位と３．５差の大混戦となっている。

　◆野口　恭佑（のぐち・きょうすけ）２０００年７月１７日生まれ、２３歳。長崎県出身。１８０センチ、８６キロ。右投げ右打ち。外野手。創成館、九産大を経て２２年度育成ドラフト１位で阪神入団。昨年１１月に支配下登録。プロ初出場は２４年６月２９日・ヤクルト戦で代打（死球）。長打力が魅力のプロ２年目。