100年前も100年後も変わらない甲子園の職人芸 井川慶氏&阪神園芸・金沢健児氏スペシャル対談

 甲子園100周年を迎え、元阪神エースでデイリースポーツ評論家の井川慶氏(44)と、阪神園芸の金沢健児氏(57)のスペシャル対談が実現した。井川氏の阪神在籍時から親交の深かった二人が、当時の思い出や甲子園の今、そして未来について語った。

  ◇  ◇

 -井川氏にとって甲子園は、高校時代に投げられなかった場所。

 井川慶氏(以下、井川)「初めてグラウンドを踏めた時には、高校時代に来たかったなと思いましたね。初登板はバックネットの低さが衝撃的で。後ろにお客さんがいてキャッチャーとの距離感がつかめず、全然ストライクが入らなくて。高校時代じゃなくて良かったなと(笑)」

 -その当時と今でマウンドの硬さは違う?

 金沢健児氏(以下、金沢)「全然違います。今はメジャーリーグと同じ土を使っているので、今は当時より全然掘れないです。2000年頃から、ナゴヤドーム(現バンテリン)が硬くてそれに倣って硬くしようという球場が多くなってきた中、甲子園は屋外で湿気の関係で削れやすかったりするので、比較的その頃は他球場より掘れやすかった。だんだんと他球場で掘れないところができてきて、甲子園が逆に掘れやすいと言われだしたのが、井川君がエースになった頃かなと」

 -当時、金沢さんにリクエストは?

 井川「硬くしてくださいということですね」

 金沢「ややこしいリクエストとかは言われなかったです(笑)」

 -阪神園芸さんの仕事をどう見ていた?

 井川「雨が降ろうが毎試合、同じコンディションになりますよね。練習では外野の芝生を走ったりしましたが、コンサートがあって芝生が悪くなっても数日で回復する。メジャーは内野が土というのがほぼなくて芝の管理はしっかりしていましたけど、甲子園は芝生と土の両方の管理をされていて、すごいなと」

 -“神整備”が話題となるが雨の時に試合ができるかの心配はあった?

 井川「基本的に、自分は投げる前日に分かりましたね。シートを全面に張っていれば、やる気があるなとか(笑)」

 金沢「今は雨の予報であれば必ずシートを張ります。全試合完売とかという状況もあって、チケットを持っている方、その日しか来られない方のためにもできる限りやろうと。ただ、引っ張るだけ引っ張って中止となると、遠方から来る方に影響がある。明らかにできない予報なのに引っ張るのもおかしいので、さすがに厳しいということであれば、基本的には開門までに中止を発表。開門後も決まっていない時は、最後まで可能性を探っていると思ってもらえれば。3時間、4時間後とかは変わってくるので、14時に決めるのはリスクもある。結果的にできたかもしれないという日もありますが、それは結果論でもあるので」

 -井川氏にとっては、最も思い出深い球場。

 井川「そうですね、一番投げていると思うので。最初の方は感覚的に難しくても、慣れてくると優位性というか。右中間、左中間が広いとか、いろんないい思い出が多いですね。逆につらい思い出としては、とにかくポール間が遠いなと(笑)。練習で走るんですが、他の球場とかはわりと狭いので」

 金沢「でも甲子園でそれだけ走ったから、この太ももができたと(笑)」

 -甲子園には今後どうあってほしい?

 井川「今は一番いい感じですよね、雰囲気的にも。見やすいですし。ピッチャーからすると、今は、他球場でもスタンドとの距離を近くするとかがありますが、ファウルゾーンが狭くなるじゃないですか?甲子園はこのままの方がありがたいなと。何と言うか、甲子園という感じがしますよね。昔のイメージも残ったままの、100年という歴史があるわけなので、維持してもらいたいものもありますよね」

 -整備という意味では、10年、20年前と変わってくる部分も?

 金沢「そこは変わってなくて。使っている機械の性能は上がっていると思いますが、道具というのは結局、とんぼはいつまでも使ってますし、人間の手で水もまいてます。100年前とは言わないですけど、50年前ともそれほど変わっていないと思いますね。使える道具の性能は上がっているので時間が短縮できるとかいうのはあるかと思いますけど」

 (続けて)

 「中学生か高校生の頃に野球中継を見ていたら、雨で中断していた時に一輪車で砂を運んでいる映像を見て『いつまで一輪車で運んでいるんでしょうね、この時代に』と実況者、解説者の方が言っていたのを覚えていますけど、今の時代でも一輪車を使っているでしょ?結局、車で入るとグラウンドが傷むとか。もちろん、今後傷みにくい機械とかを作るかもしれないですけど、そのための動線を作らないといけないとか、別で必要になるものも出てくる。いろいろ考えると、一輪車で砂を運ぶことというのが、より効率良くて、人が手をかけてグラウンドを整備するというのは、この先も変わらないんじゃないかなと。よっぽどすごい発明があれば別ですが」

 -自動化が進む世の中でも、職人芸など変わらないものもある。

 金沢「甲子園も人工芝でいいんだとか、ドームにするとか、そうなれば変わるでしょうけど。天然芝と土の屋外のグラウンドであれば、そこまで変わらないんじゃないかと思いますね」

 井川「この先も変わらず、というのは全員が思うことでしょうね。甲子園に屋根を付けてくれという人はあまりいないと思いますし、100年の歴史を維持してもらいたいですよね」

 ◇金沢 健児(かなざわ・けんじ) 1967年6月6日生まれ、57歳。神戸市出身。高校時代に甲子園でグラウンド整備などのアルバイトを経験し、卒業後に2年間の会社員生活を経て、88年3月に阪神園芸に入社。03年途中からチーフグラウンドキーパー。現在はスポーツ施設本部 甲子園施設部長を務める。

 ◆井川慶の甲子園初登板 入団2年目の、1999年5月2日に1軍の広島戦で。2番手で五回からプロ初登板を果たすも、先頭の笘篠に死球を与えると、前田に四球、江藤に四球で満塁となり、金本に中前適時打を許して降板。0/3を1安打3四死球3失点だった。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

阪神タイガース最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス