【井川慶氏の眼】サイ・ヤング賞投手と重なる阪神・及川の投球 両サイドへの変化球がとにかく素晴らしかった
「阪神9-6巨人」(31日、甲子園球場)
阪神は初回に野口の押し出し四球、木浪の2点適時打、さらに及川のプロ初安打となる左前適時打で4点を先制すると、その後も攻撃の手を緩めず、9得点を奪って今季2度目の6連勝。首位・巨人相手の連勝でゲーム差を1・5に詰めた。5回2失点と力投の及川は5年目で念願の先発初勝利。デイリースポーツ評論家の井川慶氏は「サイ・ヤング賞投手のロイ・ハラデーを思い出した」と絶賛した。
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及川投手には、どんどん真っすぐで押していくイメージを持っていましたが、いい意味で器用な投手だなという印象を受けた投球でした。
フォークやチェンジアップのような縦の変化がない中でも、及川投手から見て左側に変化するツーシームと、右側に変化するカットボールがとにかく素晴らしかった。どちらも曲がりながら沈むような軌道のため、打者にとって非常に厄介なボールだったでしょうし、しっかりと腕を振って投げることでより効果的に決まっていましたね。
思い出したのは、もう亡くなった選手ですが、ブルージェイズとフィリーズで活躍したロイ・ハラデーという、サイ・ヤング賞を2度受賞した右投げの投手です。彼は、まず高さは打者のベルトより下に投げるということを徹底した上で、チェンジアップも投げますが、基本的にはそれぞれ両サイドに沈むようなカットボールとシンカーで打ち取るスタイルでした。
松井(秀喜)さんも『ハラデーは打ちにくい』と言われていたことを覚えていますし、僕自身も実際に見て、すごい投球だなと感じたサイ・ヤング賞投手の記憶を、及川投手がよみがえらせてくれました。