5年目の阪神・井上 我慢の連続からつかんだ“ラストチャンス”
「DeNA3-2阪神」(28日、横浜スタジアム)
痛恨の敗戦を喫した中、通算82打席目でのメモリアルアーチが一筋の光となった。5年目の阪神・井上広大外野手(23)が、六回に一時同点となるプロ1号ソロ。5月18日以来のスタメンで5番に抜てきされると、初回には二塁打も記録するなど存在感を示した。
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2020年のドラフト会議の後、井上にド直球な質問をぶつけたことがある。将来のクリーンアップ候補として大きく期待されながら、翌年に即戦力の外野手として佐藤輝が入団。強力なライバルが出現したことを、どう受け止めているのか。即答だった。
「同じ年になった時、抜けるように努力するしかないでしょ」
井上らしい答えだった。あれから4年。まさしく大卒1年目の年齢になった。前川や森下、野口らの加入で争いは激化しているが、井上にしかない良さ、魅力がある。
今年も腐りかけた時がある。我慢、我慢で1軍に呼ばれるのを待ち、ようやくチャンスが巡ってきた。20年10月のプロ初安打の試合も無安打なら抹消という土壇場から、一打を放った。この日もシーズン最終盤の“ラストチャンス”だったかもしれない。
もう5年目だが、まだ23歳。「長かったですけど、この一本をきっかけに」。プロ1号はスタートライン。苦しんだ分だけ、強くなった。父親となり守るべき人もできた。大輪の花を咲かせるのはこれからだ。(デイリースポーツ・今西大翔)