送りバントなのかバスターなのか 阪神の“幻惑攻撃”に疑心暗鬼となった?中日守備陣【岡義朗氏の眼】

2回、送りバントのかまえをみせる梅野(撮影・飯室逸平)
 2回、右前打を放つ梅野(撮影・飯室逸平)
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 「阪神4-1中日」(3日、甲子園球場)

 阪神が中日に勝ち、首位広島との差を4・5ゲームとした。高橋遙人投手(28)が7回を無失点で復帰以降無傷の3勝目。中日先発の高橋宏からは細かい攻撃で先手を奪い、逃げ切った。デイリースポーツ評論家の岡義朗氏は試合の流れを決定づけた「バントとバスター」の効果に視点を当てた。

 ◇ ◇

 好投手の高橋宏斗を阪神打線がどう崩すのか。そこに注目していたが、二回無死一、二塁から見せた梅野のバスターは、この試合の大きな分岐点になったね。

 梅野が初球のストライクをバントの構えから見送ったのが伏線になったと思う。その3球目。同様にバントの構えからヒッティングに切り替え右前へはじき返した。

 中日内野陣はバントと決めつけプレッシャーをかけてきたが、完全に裏目に出た形だ。ベンチからのサインか本人の判断かは分からないが、この一打でゲームの流れをグイっと引き寄せた。

 もっとも、その流れを作ったのは初回無死一塁から決めた中野の送りバントにある。一塁走者が脚力のある近本であるにもかかわらず、送りバントを使う手堅い戦法が『下位打線ならなおさらだろう』という中日サイドの“決めつけ”につながったはず。

 阪神に貴重な3点目が入ったのは七回。今度は疑心暗鬼が中日守備陣の動きを狂わせたように見えた。

 無死二塁から代打の熊谷が送りバントを決めたシーン。明らかなバント要員に思えたが、バスターの不安が石川のダッシュを鈍らせたのか。一塁への完璧な送りバントとなった。

 直後に近本の右前打が飛び出し、効果的な3点目が阪神に入った。

 この試合、阪神は七回までに4度の送りバントを成功させ、バスターからのヒットが1つ。細かい野球で高橋宏斗を切り崩し、得意の継投策へと持ち込んだ。

 先発した高橋遙人は低めを丁寧につく安定した投球で7回を被安打3。奪三振4が物語るように必ずしも絶好調ではなかったようだが、抜群の制球力が光った。ゴロゾーンへの徹底した投球で、内野ゴロ(14)が多かった。すべての打球をさばき切った内野陣の動きも評価したいね。

 攻撃面では好投手相手ということを意識したのか、早いカウントから積極的に打ちに行く姿勢を感じた。それが二回の先制点につながったのではないか。

 打線が低調な時によく見られるのが“待球”意識。意図的にそういう作戦を取ることもあるが、今シーズンは打てる球を見送り、打ちにくい球に手を出して追い込まれ、打ち取られるケースが目立つ。この日のような好投手に対しては好球必打が基本でしょう。

 高橋の好投があってこそだが、守備と攻撃面でもいい野球ができた。ベンチからすれば“普通の野球”かもしれないが、会心の勝利だったのではないか。

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