阪神・藤川新監督 04年終盤に別人のような剛速球連発、07年オフメジャーへの思い 何度も驚かされた、次はどんな驚きを

 阪神の新監督に決まった藤川球児氏(44)の素顔を紹介する企画。デイリースポーツ歴代担当記者が、当時の取材エピソードや人となりを明かす。

  ◇  ◇

 昔から大小はあれど、藤川新監督には何度も驚かされた。例えば2004年のシーズン終盤での、ある甲子園での1軍戦。リリーフとしてマウンドに上がり、見たことがないような150キロ台の速球を連発。打者を力で圧倒し続けた投球は、どこか弱さを感じさせた前年までとは別人のような姿だった。

 その試合後、ベンチ裏からロッカーへと続く階段で「驚いたやろ?でもまだまだこんなもんじゃないから見といて」と、たっぷりと自信を携えながら笑っていたことを覚えている。こんなもんじゃない、がどんなものか。想像できなかったが、おそらく彼には見えていたのだろう。翌年優勝に貢献した大活躍が、その答えだった。

 そこからの大ブレークは誰もが知るところだが、06年オフに、井川慶のポスティングシステムによるメジャー移籍が決まる。当時、井川の代理人を数年にわたって務めていたのが橋岡宏成弁護士。2人をよく取材していたこともあり、藤川からその“井川をメジャーに連れて行った人”に、代理人を頼むことを考えている旨を伝え聞いた。その考えに驚きと、どこか納得したことを覚えているし、翌年の契約更改交渉で橋岡弁護士を伴い、メジャー挑戦の思いを明かす形となった。

 ただ当時、橋岡弁護士からは「井川君と球児君とでは違いますよ」と聞いていた。ニュアンスは難しいが、とにかくメジャーだけを見ていた井川と、そうではなかった藤川といったところか。結果的に藤川はポスティングではなく、海外FA権を行使して12年オフにカブス移籍が決まった。

 その後、13年を迎えて間もなく、プライベートな場で、藤川と話すタイミングがあった。そこでの会話を思い出す。

 「これは単にアメリカでということだけではなくて、また日本に帰ってくるかもしれないし、いずれ野球を辞めた後とかも含めて、この先もいろいろなものを見せていけたらと思っていますから。楽しみにしていてくださいね」

 野球を辞めた後の、藤川の新たな挑戦が始まる。次はどんな驚きを見せてくれるのか。期待と楽しみでしかない。(デイリースポーツ・道辻 歩)

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