阪神・大山が残留「もう一回、優勝日本一を一緒に」覚悟の決断 5年契約、総額17億円プラス出来高払い
国内フリーエージェント(FA)権を行使した阪神・大山悠輔内野手(29)が29日、西宮市内の球団事務所で会見を行って、残留を表明した。球団最長タイとなる5年契約の総額17億円プラス出来高払いで合意。巨人から熱烈ラブコールを送られる中、悩みながらも猛虎愛を貫いた。来季もタテジマの一員として、「決めた以上は相当の覚悟を持ってやらないといけない」と覇権奪還を目指すことを誓った。(金額は推定)
スリーピースのスーツで決めた虎の主砲が、晴れやかな表情を浮かべて、黄色と黒の球団旗の前に着席した。「来年からもタイガースでプレーすることを決めました」。開口一番、阪神ファンに朗報を届けた大山。決断理由を「一番が多すぎて。いっぱいあるんですけど」と前置きした上で説明した。
「まずはやっぱり監督、コーチ、スタッフの皆さん、裏方の皆さん、そしてチームメートともう一回、優勝日本一を一緒に達成したい、その気持ちが強かったです」
昨季の日本シリーズで刻まれた歓喜の記憶。「歓声というか、地鳴りのような、あの感動が忘れられない。もう一回…もう一回とは言わず、何回も経験したい」と常勝猛虎で戦う自分自身を思い描いた。
13日にFA権行使を表明してから17日目、この日の朝に心を決めたという。前日28日には選手会納会に参加。「選手、裏方さんといろいろ話していく中で、思うこともあったので。裏方さんに必要と言ってもらえて、うれしかったというのもありますね」と“最後のひと押し”もあった。
悩める日々の中で迎えた23日のファン感謝デー。FA宣言中の選手としては異例の参加となったが、残留への願いを込めた「大山コール」が甲子園に響いた。スタンドで揺れるネームタオルを目の当たりにして「僕の赤いタオルを広げてもらってすごくうれしかったですし、赤いタオルをもっともっと増やしたいなと素直に思ったのもあるので」と虎党の気持ちが胸に染みた。
ただ、心の針が移籍へ振れた時期があったことも隠さず認めた。「一度きりの人生ですし、野球人として他球団でプレーすることで、プラスになることは分かってました。新しい自分を発見できる可能性がある中でいろいろ考えました」。巨人は最長6年、24億円超の大型契約を提示した上で、阿部監督や主力選手がラブコール。阪神とは5年契約の総額17億円プラス出来高払いでの合意とあって、条件面では下回ったが、タテジマを身にまとってのV奪還への思いが勝った。
藤川監督にも直接電話で報告し、「良かった。うれしい。一緒に頑張ろう」と歓迎されたという。「決めた瞬間は安堵(あんど)感がありましたけど、そこで来年に向けてやるしかないと思ってたので。もう切り替えというか、気持ちはできてます」。自問自答を続けてきた日々にピリオドを打った。もう迷うことはない。全身全霊で猛虎道を突き進む。
◆球団最長タイの5年契約 過去に阪神と5年契約を結んだのは片岡篤史と鳥谷敬の2人。片岡は2001年オフにFA宣言して日本ハムから阪神へ移籍して5年契約。鳥谷は14年オフに海外FA権を行使し、翌15年1月に阪神球団と5年契約を結び残留した。