阪神育成4位・川崎 復興の“箸”渡しに 父の思い詰まった輪島塗持参「頑張っている姿を届けられたら」

 阪神の新人9選手が6日、西宮市の選手寮「虎風荘」に入寮した。育成ドラフト4位・川崎俊哲内野手(23)=日本海L石川=は、地元で輪島塗の製造販売を行う「川崎漆器店」を経営する父手作りのコップと、箸を持参。故郷の伝統工芸品パワーで支配下、レギュラーの座をつかみ取る。

 プロでのスタートに向けて手渡されたのは、父の思いが詰まった輪島塗だった。川崎は「箸は一番代表的なもの。それと茶わんかなと思うけど、なぜかコップだった」と笑うが「(制作時間は)かなりじゃないですかね。渡すのを結構渋っていたので」と心のこもった物であることは、重々分かっていた。

 昨年1月に発生した能登半島地震で、実家兼店舗も被害を受けた。大きなショックから立ち上がった父から「頑張れよ」という言葉とともに贈られた輪島塗を見つめ「より一層頑張らないといけないなと。実感が湧いてきた」と決意を新たにした。

 場所は変わっても、被災地への思いは尽きない。震災からちょうど1年となった元日には、家族全員で地震発生時間に黙とうをささげた。「その日のことを思い出して悲しい気持ちになりますけど、さらに復興が進んだらいいなと思って」と願いを込めた。

 年末年始、地元の人はプロの世界へ羽ばたく川崎に「頑張れ」と声をかけてくれたという。「頑張っている姿を届けられたらいいなと思います。もうやるしかないっていう気持ち。輪島を元気づけられたらいいなと。それしかない」と意気込んだ。

 初めて地元の石川を離れ、迎えた入寮日は冷たい雨が降り続けた。それでも8日から始まる新人合同自主トレ、2月のキャンプへ向けて気持ちはすでに熱い。「いよいよだなって実感も湧いてきました。スタートダッシュに向けて徐々に合わせて、いいスタートができるように」と気合十分だ。

 同期ドラフトでは最下位となるが、そんなことは関係ない。川崎の視線は上を向いている。「まずは支配下。そこは通過点にして、1軍の舞台で活躍できるような選手になることが一番の目標。頑張っていきたい」。故郷の大きな期待を背負い、プロ生活をスタートさせる。

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