２月３日に脳梗塞のため、９１歳で亡くなった阪神の元監督・吉田義男さんの「お別れの会」が２５日、大阪市内で行われ、約５５０人が出席した。第１部では藤川監督をはじめ、１軍帯同の選手、コーチ陣、スタッフが献花。第２部では球団ＯＢや関係者らが献花し、岡田彰布オーナー付顧問（６７）が感謝と笑いの弔辞で大恩人と惜別した。

　コチョウランの白い円を３６０度、鮮やかな黄色の菊が埋め尽くす。超満員の甲子園の中心にいるような吉田氏に、岡田顧問はこう語りかけた。

　「監督、大事なときに声出ないんです。体調壊して、本当はもっとたくさん語りたかったんですけど、聞きづらいかも分かりませんけど、監督、聞いてください」

　自然な思いがあふれた。「突然の訃報が信じられません。悲しく寂しい思いでいっぱいです」。初めて同じユニホームを着たのは吉田氏が阪神で２度目の監督に復帰した１９８５年。前年のオフに吉田氏から「二塁いけるか」と声をかけられ、外野からコンバートする転機となった。

　直後の安芸キャンプではハードなノックで鍛えられた。「野球をやっていて、『守りで攻めろ』と言われたのは吉田さんが初めてでした」と懐古した。８５年は打率、本塁打、打点でキャリアハイを記録。「プロ野球人生の転機となりました」と感謝した。

　学びは日本一を達成した２３年の礎にもなった。「２度目となる日本一を私が監督として成し遂げることができたのは、当たり前のことを当たり前にやる吉田イズムを学ばせていただいたおかげです」。続けて「私にとっては感謝してもしきれない大恩人です」と語りかけた。

　終盤に「今でも話の食い違いがあります」と明かしたのは、巨人戦での江川からのバント談議。吉田さんは生前「俺は絶対にバントのサインを出していない」とこだわっていたことを明かし、「本当はバントのサイン出てましたよ」とニヤリ。「３球目までバントのサインでした。１ストライク２ボールでエンドランに変わるかなと思っていたら、本当にエンドランのサインが出ました」と明かし、「案の定、レフトスタンドにホームランを打って勝ちましたよ。最初で最後のバントのサインでした。これが本当の真実です」と秘話を披露し、会場は温かい笑いに包まれた。

　緊張が解けた空気の中、最後は強い覚悟で締めくくった。「時代が変わっても吉田イズムを継続していかなくてはならず、それが私の果たすべき役割だと思っています」。そして、「その姿をどうか温かく見守ってください」と優しいまなざしで恩師を見つめた。