ボーア選手夫人から“お見舞い”のサインボール 阪神助っ人の家族をサポートしたい

 子どもの頃、カナダ生まれの僕はプロアイスホッケー選手になりたかった。無理と悟った後は、ジャーナリストとしてプロスポーツに携わることが夢だった。実現しなかったけれど、日本にいる今、阪神タイガースの助っ人選手たちを通じて“スポーツの現場”を感じることができている。今季は新型コロナの影響で選手に会うことは難しいが、そのご家族とは例年通りに良い関係を築きつつある。

 ボーアの奥様ヘイリーさんからは、来日前からSNSを通じて日本や阪神についていろんな質問を受けた。来日後もメールでやり取りしていて、個人的な近況を教え合うことも。そんな中、6月のある日に「最近どう?」と聞かれたので「6歳の息子が脚を骨折したよ」と答えた。「かわいそう!何かしてあげたいけど。ジャスティンのサインバットとかは元気付くかな?」とヘイリーさん。すると7月、僕が観戦に行った際に、球団の通訳さんを通してサインボールを届けてくれた。もちろん阪神ファンの息子は大喜び。翌日に「さすがにバットをスタンドに届けるのは難しい。また今度ね!」とヘイリーさんからメールがあった。なんて気さくな人なんだ。

 サンズのご家族にも仲良くしてもらっている。奥様のモーガンさん、そして2人の息子さんには何回かお会いした。息子さんたちは可愛くて、少年らしく、戯れあいがお好き。特にパパが遠征中だと、そういうスキンシップが欠けてるのかなぁと勝手に思ったりして、僕がその戯れあいに入ることもあった。(ソーシャルディスタンスを保ちながらのレスリングは難しい!)僕の妻とモーガンさんは連絡先を交換していて、お友達になってると言ってもいい。

 なぜ、このように選手のご家族とお付き合いがあるのか?それは、僕が運営している「英語で阪神情報を配信するサイト」からの繋がりだ。阪神ファンが高じての情報発信が、こんなことになろうとは…。

 僕が来日して阪神に興味を持った頃、球団公式サイトは日本語のみ。英語で「Hanshin Tigers」をググっても何も出てこなかった。でも阪神の助っ人選手には、母国の家族、親戚、友人、メジャー時代からのファンなど、近況を気にする人がたくさんいる。そこで、その穴を「オレが埋メル!」と決心。2014年に英語での阪神情報配信を開始した。

 すると、まもなくメッセンジャーのお母さんや奥様、さらにマートンの奥様が僕のサイトやSNSを発見してくれた。さらに、キャンベルやナバーロの家族から問い合わせのメール受けたりして、次第に選手本人と繋がるようになった。ヘイグやドリスとは直接会ったり、ロジャースやジョンソンとも連絡を取り合ったり…そして今に至っている。

 プロアイスホッケー選手を夢見ていた僕は、優勝の瞬間を近くで経験したいが故に「プロスポーツの現場」に憧れていた。しかし今は、助っ人選手たちのご家族をサポートしたいと思っている。外国人選手の多くが家族を連れて海を渡ってくる。奥様、子供たちは言葉も分からず、新しい国や文化に慣れるのに苦労するでしょう。選手自身は毎日野球に没頭するから、ご家族との時間は少なくなる。だからこそ、僕がその手助けになれたら本当に嬉しく思う。

 ロッカールームでビールかけに参加できなくても、選手の支えである家族をサポートできたら、阪神やスポーツ界に貢献できたと言えるのではないでしょうか(少々言い過ぎ?)。今年は難しいかもしれないけれど、近い将来に阪神が優勝して、助っ人たちがロッカールームで大騒ぎ…という夢を見ている。その瞬間、僕は横で取材しているのではなく、優勝に“貢献”した誇りを胸に秘めながら自宅リビングのソファでゆっくり美酒を味わいたい。その日のために、これからも阪神タイガースに関心のある外国人に向けて、貴重な情報を配信し続けたい。

 ◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。

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